電気自動車(EV)の実航続距離が、米環境保護庁(EPA)の推定値を大きく上回ったとするオーナーの報告が相次いでいる。低速走行や穏やかな加速、回生ブレーキの積極活用、温暖な気候といった条件がそろえば、認定値を超えるケースもあるようだ。
米Electrekが8月31日(現地時間)に報じたところによると、オンライン掲示板「Reddit」では、Ford E-Transitのオーナーが、EPA基準で116マイル(約187km)とされる車両で、夏場に約140マイル(約225km)走行していると投稿した。約1800ポンド(約816kg)の荷物を積んだ状態でも、認定値を約20%上回ったとしている。
投稿者は、高効率の要因として、時速40マイル(約64km/h)前後で走るカーブの多い道路を主に利用していることや、通常のブレーキをほとんど使わず回生ブレーキを活用していることを挙げた。
同じ車両を使う別のオーナーも、夏場には約150マイル(約241km)まで走れると説明した。エコモードを維持し、急加速を避け、時速30~60マイル(約48~96km/h)の比較的低い速度域で走ることが多いという。
このほかのユーザーからも、電費が約5マイル/kWh(約8.05km/kWh)に達した例や、EPA基準より最大100マイル(約161km)長い航続距離が車載表示に出た例が共有された。ただし、こうした一部の数値は満充電から完全放電までの実測結果ではなく、あくまで車載表示の推定値であり、客観的な性能試験とは分けて見る必要がある。
もっとも、こうした事例はEPAの基準が過度に楽観的だという意味ではない。EPAはむしろ、実験室で測定した値に補正をかけ、実際の走行環境を踏まえて表示値を引き下げる方式を採っている。
EPAによると、EVは満充電の状態で実験室の走行試験を実施した後、エアコンの使用、寒冷環境、高速走行、急加速を伴う運転など、試験では十分に反映しにくい要素を考慮して数値を補正する。
最も一般的なのは、試験結果に0.7の補正係数をかける方法だ。例えば、実験室での高速道路試験で200マイル(約321km)を記録した車両でも、実環境を踏まえた推定値は140マイル(約225km)まで下がる可能性がある。
そのうえで、補正後の市街地走行と高速道路走行の航続距離を、それぞれ55%、45%の比率で合算し、最終的なEPA複合航続距離を算出する。メーカーは規定に基づき、別の認定済み補正方式を選ぶこともできる。
EPAの航続距離は、1回の充電で必ず走れる距離を示す固定値ではなく、さまざまな運転条件を踏まえた標準化された推定値だ。EVは高速走行や寒冷時に航続距離が短くなりやすい一方、温暖な気候の下で低速かつ穏やかに走らせ、回生ブレーキを有効に使えば、EPA推定値を上回る可能性もある。