写真=Reve AI/争点は、ステーブルコインを決済手段とみるか、預金代替とみるかにある

米地域銀行業界が、ステーブルコインに実質的な利回りを付与できる余地を残すことに強く反発している。全米独立地域銀行協会(ICBA)はクラリティ法案の修正を求めており、預金流出が地域向け融資を圧迫しかねないとの懸念が、上院での採決見通しにも影響を及ぼしている。

8月31日付のCoinPostによると、ICBAのレベッカ・ロメロ・レイニー会長兼CEOは、ステーブルコインを巡る法案修正について「妥協の余地はない」と述べ、実質的な利回り付与につながる抜け道を認めるべきではないとの立場を示した。

争点は、ステーブルコインを単なる決済手段として位置付けるのか、それとも銀行預金の代替として機能し得るものとみるのかにある。

レイニー氏は、ステーブルコインについて「もはや単なる決済手段にはとどまらないように見える」と指摘したうえで、「従来の預金システムを支えるインフラがなくても、預金に極めて近い性格を帯び始めている」と語った。地域銀行業界は、こうした構造によって銀行預金が銀行システムの外に流出し、地域密着型の貸出機能が弱まる可能性を警戒している。

ICBAは、将来的に最大1兆3000億ドルが銀行預金からステーブルコインに移る可能性があると試算する。これに伴い、地域社会向け融資が8500億ドル減少する可能性があるとしている。

地域銀行は、地域で集めた預金を地域向け融資として還流させることで成り立っている。預金基盤が縮小すれば、地域金融の供給力も低下するというのが業界側の主張だ。

この問題は法案審議の日程にも影響を与えている。上院では9月15日、クラリティ法案の本会議入りに向けた討論終結動議の採決が行われる見通しだ。

レイニー氏は、法案可決に必要な票はなお固まっていないとの見方を示し、その背景の一つに、地域銀行が懸念する預金流出リスクへの対応があると指摘した。

現在議論されている法案では、ステーブルコインの保有自体に報酬を与える仕組みは禁止しつつ、プラットフォーム内での複数の活動に対するインセンティブとしての収益提供は認める方向が取り沙汰されている。

ただ、銀行側はこの条項が曖昧だとして反発している。レイニー氏は「この抜け道は完全に塞がなければならない」と述べ、ステーブルコインが迂回的に預金代替機能を持てば、規制の趣旨が損なわれかねないとの懸念を示した。

この見方は、ホワイトハウスの経済諮問委員会が4月に示した分析とは大きく異なる。同委員会は当時、ステーブルコインへの利回り付与を全面的に禁じても、銀行融資の増加効果は21億ドル、率にして約0.02%にとどまり、影響は限定的だとしていた。

これに対し、レイニー氏は、クラリティ法案が成立した場合に市場構造がどう変わるかを現時点で見通すのは難しいと反論した。

同氏は、足元のデジタル資産市場は投機や投資を中心に動いているものの、送金や決済のインフラが整えば状況は変わり得るとみている。そうした変化は「ゲームチェンジャーになり得る」とも語った。

ステーブルコインが日常決済や資金移動に一段と浸透すれば、現在よりはるかに大規模な預金移動が起きる可能性がある、というのが地域銀行業界の問題意識だ。

加えて、米通貨監督庁(OCC)による信託銀行免許や、米連邦準備制度理事会(FRB)による決済用マスター口座を巡る検討も、銀行側の警戒感を強めている。

地域銀行業界は、暗号資産関連企業やフィンテック企業に対する規制緩和が重なれば、既存の預金基盤が一段と揺らぐ可能性があるとみている。

最終的な焦点は、上院採決を前に、ステーブルコインへの利回り付与を禁じる条文をどこまで明確化できるかにある。地域銀行業界は、ステーブルコインが預金代替として機能する道を塞ぐべきだと主張する一方、反対論は銀行の信用供給への影響は限定的だとみている。

ステーブルコイン規制を巡るこの対立は、クラリティ法案の票読みそのものを左右する可能性が高まっている。

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