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アイルランド政府は、2027年に導入する個人向けの新たな税制優遇投資口座について、暗号資産を対象外とする方針を決めた。対象となるのは上場株式や上場債券、規制市場で取引される金融商品、ETFを含むリテール向け投資ファンドで、デリバティブも除外する。

ブロックチェーン関連メディアのCryptopolitanが8月31日(現地時間)に報じた。対象資産や制度の方向性は、サイモン・ハリス副首相兼財務相とロバート・トロイ国務相が同日公表したリテール投資課税ロードマップに盛り込まれた。

ロードマップでは、暗号資産をデリバティブと並ぶ高リスクかつ複雑な商品と位置付けた。利息の付く現金性資産も口座の対象外とする。

新制度は、個人の資本市場参加を広げる一方で、税制優遇の対象を政府が定める資産に限定するのが狙いだ。口座を開設できるのは、アイルランド税法上の居住者で、個人公共サービス番号(PPSN)を持つ18歳以上の個人。開設できる口座は1人1口座に限られる。

最低拠出額や強制的な預け入れ期間は設けないが、年間の拠出上限は設定する。税率、非課税基準、年間拠出上限は、10月6日の予算案発表日に確定する予定だ。

課税の枠組みも示した。一定の非課税基準までは課税せず、基準を超える部分については口座評価額に基づき、単一税率を毎年適用する方式とする。適格事業者が口座保有者に代わって税額を計算し、申告・納付を担う。事業者間での口座移管についても、税務上不利が生じないよう設計する方針だ。関連法案は財政法案に盛り込み、制度は2027年に始動する。

政府はこの制度を、家計の投資参加を拡大するための施策と位置付ける。ハリス副首相兼財務相は、資本市場が「相当の資産を持つ人や、金融の専門知識がある人だけのものだと受け止められるべきではない」と述べた。一方で、「投資にはリスクが伴うため、中長期の視点で取り組むことが望ましい」とも語った。

今回の制度で焦点の一つとなっているのが、ETF課税の扱いだ。アイルランドでは一部ファンドに対し、実際に売却していなくても8年ごとに売却したとみなして課税する「みなし処分」規定を運用してきた。ETFも対象だったが、新たな投資口座の内部ではこの規定を適用しない。

みなし処分にかかる税率は、2026年予算案で41%から38%へ引き下げられた。一方、制度そのものの見直しは続いている。ハリス副首相兼財務相は今年初め、議会でこの税制について「本来の目的に合致しているか確信が持てない」と述べ、「時代遅れ」との認識を示していた。政府は今後数週間以内に、みなし処分制度全体をより幅広く点検する方針も明らかにした。

ロードマップではこのほか、2028年予算案以降の課税引き下げ、みなし処分の再検討、行政手続きの簡素化も今後の課題として示した。背景には、アイルランドの家計による投資参加率が欧州連合(EU)平均を下回っているとの問題意識がある。

アイルランド家計の金融資産に占める、上場株式や債券などへの直接投資の比率は2.3%で、EU平均の約7.5%を下回る。一方、現金・預金の比率は38%と、EU平均の30%を上回った。

アイルランド中央銀行の調査でも、同国は5兆ユーロ超のファンド資産を抱える一方、リテール投資への参加率はEU内でも低水準にとどまった。政府としては、税制優遇口座の導入で投資の裾野を広げつつ、暗号資産は制度的な奨励対象から切り離す線引きを明確にした格好だ。

あわせて、EUのDAC8指令は2026年1月1日に発効した。取引所や仲介業者には、利用者情報や取引データを各国当局に報告する義務が課される。新たな投資口座で暗号資産が対象外となる中でも、デジタル資産は別の規制・課税枠組みの下で扱われる構図が続く見通しだ。

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