ドナルド・トランプ米大統領は8月31日(現地時間)、人工知能(AI)データセンター建設に反対する地域社会を公然と批判した。AIインフラ拡大を巡る対立が、オハイオ州の上院選を含む政治的争点に発展しつつある。
CNBCなど複数の海外メディアによると、トランプ氏は同日、自身のSNS「Truth Social」で、「全米の地域社会がデータセンターを望まないのは、立ち遅れて貧しくなりたい場合だけだ」と投稿した。データセンターを受け入れれば税負担が軽くなり、雇用も増え、地域経済の成長につながると主張した。
さらに、建設を拒めば事業機会を他地域に奪われかねないとして、「金の卵を産むガチョウを殺すようなものだ」と警告した。反対運動は中国を利するだけだとも訴えた。
こうした発言の背景には、米国内でデータセンター建設への反対論が広がり、共和党内でも選挙リスクとして意識され始めていることがある。共和党上院選対委員会(NRSC)は最近の内部メモで、有権者の否定的な認識を早期に改められなければ、反対運動がオハイオ州以外にも広がる可能性があると警告した。
オハイオ州では、共和党のジョン・ハステッド候補と民主党のシェロッド・ブラウン候補が接戦との見方が強い。今回の選挙は、J.D.バンス副大統領が空けた上院議席の残り任期を埋めるために実施される。NRSCは、ブラウン候補がデータセンター建設反対を選挙戦の中核テーマに据え、一定の効果を上げていると評価した。
NRSCは、オハイオ州がAIデータセンター建設を先導する地域の一つだとしたうえで、この問題がハステッド候補にとって最大の逆風になっていると指摘した。仮にデータセンター問題が敗因とみなされれば、全米の政治家が今後、データセンター事業への支持に慎重になる可能性があるという。
世論調査でも反対の強さが浮き彫りになっている。ギャラップが3月に実施した調査では、米国人の10人に7人が居住地域でのAIデータセンター建設に反対し、このうち48%が「強く反対する」と答えた。
ウルフ・リサーチも8月28日付のリポートで、投資家との最近の会合で、データセンターに対する有権者の反発が今後どう広がるかについての質問を繰り返し受けていると明らかにした。過去12カ月では、政党を問わず地域のデータセンター建設に対する差し引きの支持が最大60ポイント低下した事例も確認されたとしている。
反対論が強まる背景には、AI産業の急拡大がある。AIデータセンターは、OpenAIやAnthropicなどが開発するAIモデルの学習や運用に必要な大規模計算設備を収容する施設だ。
従来型のデータセンターよりも高性能なグラフィックス処理装置(GPU)を大量に使うため、電力需要は大きく膨らむ。冷却に伴う水使用量の増加や騒音など、地域社会が負担するコストも重くなっている。
米国内では、AIの普及とともにデータセンターの新増設が加速している。とりわけテキサス州などでは大規模施設の建設を巡る住民の反発が強まっており、干ばつや水不足に直面するコロラド川流域の複数州でも、水使用を巡る新たな対立に発展している。
一部のデータセンター開発企業は、地域社会や電力会社と連携し、電力コストの分担や使用水の再利用といった対策を進めている。ただ、地域資源や環境への影響を包括的に規制する制度はなお十分ではないとの指摘もある。
トランプ政権は、AI産業の競争力強化に向けてデータセンターやAIインフラの拡大を継続的に後押ししている。トランプ大統領は雇用と税収の増加を強調する一方、地域社会では電力、水資源、環境、生活条件への影響を懸念する声が根強い。
11月の中間選挙を控え、データセンター問題は経済・技術政策の枠を超えた政治争点になりつつある。今後の米国のAIインフラ拡大政策にも影響を及ぼす可能性がある。