約12年間動きのなかったウォレットから移動した約20BTCが、大手取引所を経由してほぼ同量で元の保有者側に戻った後、5月に回収不能なアドレスへ送られた可能性が浮上している。Cointelegraphが8月31日付で報じた。ブロックチェーン分析企業のChainalysisは、この動きが5月に確認された計107BTCの焼却事案の一部に当たる可能性があるとみている。
問題のウォレットは3月、保有していた20.00010537BTCを全額移動した。約3週間後には、20.00006037BTCを受領している。差額は4500サトシで、当時の価値は約3ドルだった。
焦点となっているのは、この資金移動が単純な売買や通常の送金とはみなしにくい点だ。Bitcoin教育者のベネットは、資金が一種のカストディ機関に送られた後、再び戻された可能性があるとの見方を示した。
戻ったBitcoinはその後、5月に回収不能なアドレスへ送金され、実質的に焼却された。この動きは、5月に焼却された計107BTCの一部とみられる。当時の価値は約850万ドルだった。
Chainalysisによると、最終的にBitcoinを焼却した5つのアドレスは、同一の所有者が管理していた可能性が高い。これらのアドレスはいずれも2014年4月の同日に資金を受け取り、その後、同じ大手取引所の入金アドレスに対し、米ドル換算で近い金額のBitcoinを送金していたという。
資金の出所にも注目が集まっている。Chainalysisは、資金フローの大半がMt.Goxにさかのぼるとして、所有者がBitcoinの初期ユーザーだった可能性を指摘した。
もっとも、当該BitcoinがMt.Goxから直接引き出されたことを意味するわけではない。Mt.Goxが取引を停止したのは2014年2月で、5つのウォレットが資金を受け取ったのはその2カ月後の2014年4月だったためだ。
過去の取引パターンにも特徴がある。5つのアドレスのうち1つは、2022年から2024年にかけて計60回、合計19.6BTCを同じカストディ機関へ送っていた。
送金量は0.15BTCから0.62BTCまで幅があったものの、米ドルベースでは60件中58件が約1万400ドルの前後10%に集中していた。
3月の往復取引はさらに異例だった。12年間動きのなかったウォレットが全額を送金した後、ほぼ同量のBitcoinを再び受領し、戻った資金は7BTC、7BTC、6.00006037BTCに分けられて3日連続で入金された。
ベネットは、こうした整数単位での分割が、カストディ機関の日次出金上限と一致する可能性があるとみている。
秘密鍵の保有関係も手掛かりの1つだ。ベネットは、3月にBitcoinを移動するにも、5月に焼却するにも同じ秘密鍵が必要になるとして、往復取引の前後を通じて同一の鍵保有者が資金を管理していた可能性を挙げた。
そのため、所有者がいったん資産を受け戻したうえで、自ら焼却した公算が大きいとの見方が出ている。
焼却の背景については複数の可能性が指摘されているが、明確な結論は出ていない。古いウォレットやカストディシステムのテスト、税務・規制対応を目的とした取引だった可能性が取り沙汰されている。
一方で、取引所の統合ウォレット構造を使ってオンチェーン追跡を難しくしようとしたとの見方もある。ただ、特定の税務・規制イベントとの関連を示す証拠は確認されておらず、プライバシー確保だけで最終的な焼却まで踏み切った理由を説明するのは難しいとみられる。
Chainalysisも現時点では断定を避けている。ブロックチェーンは取引の経緯を詳細に記録する一方で、当事者がなぜその判断を下したのかまでは示さないためだ。
このため、5月の107BTC焼却の背景と、3月に行われた20BTCの往復取引の目的は、当面なお不明のままとなりそうだ。