企業向けソフトウェア各社が、AIサービス向けの課金体系見直しを急いでいる。従来のユーザー数ベースの定額課金に加え、利用量に応じて課金する従量課金や、AIが業務を完了した場合に限って料金を請求する成果連動課金の導入が広がっている。高コストなAIサービスで採算を確保する狙いがある一方、成果の帰属を巡る顧客との紛争リスクも課題として浮上している。
The Informationによると、SalesforceはAIエージェント基盤「Agentforce AI」で、顧客が課金方法を選べる仕組みの導入を進めている。AIが顧客企業の売上をどれだけ押し上げたか、あるいは顧客対応業務の自動化によってどの程度コストを削減できたかといった指標を基準に料金を決める個別契約も含まれる。
マーク・ベニオフCEOは「顧客はさまざまな形で製品を購入し、対価を支払いたいと考えている。そのことを最近、強く実感している」と述べた。
Salesforceの動きの背景には、競合各社、特にAIスタートアップが定額課金や単純な従量課金ではなく、成果連動型の価格モデルを打ち出している流れがあるとみられる。
The Informationによれば、OpenAIも最近、一部の主要顧客に対し、顧客サポートなどの業務をAIが完了した場合にのみ料金を支払うオプションの提供を始めた。Sierraや、Salesforceが買収手続きを進めるFinなど、AI基盤の顧客管理スタートアップでも、人の介在なしに業務を完了した場合に限って課金するモデルが採用されている。
コーディングAIアシスタント企業のCognitionは、顧客が支払った金額に見合うエンジニアリング成果を出せなかった場合、最大1000万ドル相当のクレジットを提供すると約束し、営業活動に活用しているという。The Informationは、Adobe、HubSpot、Zendeskなど既存のソフトウェア企業の一部も、AIが成果を上げた場合にのみ費用を請求する方向に動いていると伝えた。
ベニオフCEOは、こうした動きが単純な成果連動課金にとどまらないとの見方も示した。売上拡大など具体的な成果に応じて対価を受け取るモデルが、今後さらに広がる可能性を示唆した格好だ。
The Informationは、Salesforceの取り組みがPalantirのモデルにも近いと報じた。Palantirは企業顧客と個別契約を結び、データ統合やアプリケーション開発を進めており、料金体系は定額課金に利用量連動や成果連動の要素を組み合わせる形だという。
ベニオフCEOは「AIの課金体系を柔軟にしたことで、顧客と非常に大規模な契約を結ぶことができた」と述べた。
一方で、成果連動課金はユーザーにとって魅力的な選択肢に見える半面、どの成果が顧客自身の取り組みによるものなのか、導入したソフトウェアによるものなのかを切り分ける作業が複雑になりやすい。
顧客とソフトウェア企業の間で認識のずれが生じれば、紛争に発展する可能性もある。決済サービス企業のStripeは、成果連動課金に関するガイドラインを公開している。
Stripeは、成果がソフトウェアそのものではなく、製品改善やマーケティング施策、季節要因などによってもたらされる可能性があると指摘した。その上で、成果の帰属に関する基準が明確でなければ、顧客がその成果をソフトウェア企業によるものと認めず、異議を申し立てる可能性があると説明している。