写真=全北大学の「フィジカルAI製造技術実証ラボ」(デジタルトゥデイ、Seulgi Son記者)

【全州】全北大学は27日、製造設備の自律判断と連携制御を検証する「フィジカルAI製造技術実証ラボ」を公開した。ロボットアームや自律走行搬送ロボット(AMR)、各種センサー、加工設備を工場OSで統合し、異常検知や工程監視、対応提案をAIが担う。将来的には、設備異常時に工程順序の変更や生産分散まで自律的に行う「AI工場長」の実現を目指す。

実証ラボで公開されたデモでは、ロボットアームが操舵用ハンドルをつかんで搬送系に載せると、部品は次のセルへ移送され、別のロボットアームが続けて加工・組み立てを行った。AMRはセル間を往復して資材を搬送。取材陣の1人がロボットセル前の安全区域に入ると警告音が鳴り、稼働中の設備が直ちに停止した。壁面のデジタルツイン画面にも、約0.5秒後に工程状態の変化が反映された。

同ラボは、従来の自動化工場に「自律判断」を加える技術の検証拠点だ。決められた工程を繰り返す既存の自動化に対し、設備が異常を認識し、自ら作業順序を見直す段階まで高度化することを視野に入れる。現時点で実装したのは異常検知と対応提案までで、設備を直接調整して工程を復旧させる技術は今後の開発対象となる。

ラボの規模は846平方メートル。2025年の概念実証(PoC)事業で67億7000万ウォンを投じて整備した。実際の生産工程を再現した生産区画「Pゾーン」には、9つのロボットセルを配置する。

Pゾーンでは、AMRが原材料を搬入し、ビジョン設備が素材の状態を確認する。正常品はデバリング、レーザーマーキング、加工、組み立て、品質検査の順で処理し、不良品は別レールに振り分ける。研究陣によると、対象製品は自動車の操舵用ハンドルやルームミラーなど3品目という。

全北大学フィジカルAI融合技術事業推進団のキム・スンテ団長は「ヒューマノイドロボットを導入しただけで、すぐに工場の生産性が上がるわけではない。既存設備同士が協調して動作を合わせ、効率を高めることが本事業の狙いだ」と話した。

中核となるのは、個々のロボットの動きではなく、それらを自律的に動かす工場運用OSだ。実証ラボでは、ロボットアーム、AMR、センサー、加工設備を単一のシステムとして接続し、生産計画や設備情報を共有させている。

デモでは、研究員が「A4工程の状況を見せて」と音声で指示すると、AIエージェントが生産データを呼び出し、該当工程の画面を表示した。工程管理は複数のAIが役割分担して担い、各セルの工程別エージェントと、それらを束ねる統合エージェントが全体を監視する構成だ。

センサー値が正常範囲を外れると、工程エージェントが異常を検知し、統合エージェントが問題のある工程を特定して作業者に対応策を提示する。一方で、設備トラブル発生時に他設備や物流ロボットまで連動させて作業順序を組み替えるには、なお人や上位制御システムの介入が必要だという。

全北大学が担う本事業では、加工設備に異常が生じた際に原因を特定し、後工程の順序を調整したり、別設備に生産を振り分けたりする水準まで自律化を高める方針だ。AIが設備を直接調整して復旧し、複数工程を同時に最適化する技術の開発も進める。

生産区画を抜けた先のイノベーション区画「Iゾーン」には、マルチマニピュレーターやモバイル双腕ロボット、モーションキャプチャ、VR設備を集約した。Pゾーンが実製造工程の再現空間なら、Iゾーンはロボットに動作を学習させるための空間という位置付けだ。

ここでは、人の動きをモーションキャプチャで取得し、ロボット学習用データに変換する。さまざまな行動データを収集・学習するため、Iゾーンには計8種類、20台の設備を導入した。

専用のモーションキャプチャルームでは、全北大学の研究員が体にマーカーを装着して両腕を動かすと、正面に置かれた中国Unitree製ヒューマノイドがこれに近い姿勢で追随した。研究陣は、目標はハードウェアそのものの開発ではなく、複数ロボットに適用可能な「行動知能」の開発にあると説明する。このため、研究室で標準的に使われる海外製ロボットも実証に活用しているという。

天井に設置した高速カメラは、人の関節運動を読み取り、ロボットの身体構造に合わせて変換する。いわゆる「リターゲティング」技術だ。取得した人の動作データは、ロボットの関節情報と映像データに変換され、学習に用いられる。

実環境で確保しにくい動作や例外状況は、NVIDIA Isaac Simで生成した合成データで補う。別の設備では、人が双腕ロボットを直接動かし、物体をつかんで組み立てる動作を教示していた。この際に得られるロボットの関節情報やカメラ映像も、学習データとして保存する。

研究陣は、こうして収集した実動作データとシミュレーションデータを組み合わせ、ロボットの行動モデルを学習させるとしている。

もっとも、当日のデモがすべて順調に進んだわけではない。記者がVR機器を使った遠隔操作を体験しようとした場面では、装置がすぐには動作しなかった。実機を動かしながらデータを収集する現場だけに、想定外の変数が表面化する場面もあった。

仮想環境は、実工場では得にくいデータの生成にも活用する。火災や設備故障のように発生頻度は低い一方、対応が重要な状況を学習させるためだ。実工場で事故を意図的に起こせない以上、VRやシミュレーションで例外状況を再現し、人とロボットの対応データを確保する考えだ。

研究陣は、学外の工場でも実証を進めている。全北大学によると、2025年にはPoC技術をDHオートリード、大勝精密、東海金属の全北地域の自動車部品メーカー3社に適用した。

DHオートリードでは工程間搬送などにAMRを導入した。大勝精密では、加工設備への素材の投入・取り出しや部品分類の一部を自動化した。研究陣は、その結果、生産量がそれぞれ7.4%、11.4%増加したと明らかにした。

2025年までのPoC段階から一転し、2026年からは事業規模を大幅に拡大する。科学技術情報通信部とNIPAは、2026~2030年に慶南と全北のフィジカルAI研究開発に総額1兆4131億ウォンを投じる計画だ。

内訳は、全北に7368億ウォン、慶南に6763億ウォン。計35件の研究開発課題を推進する。科学技術情報通信部は、フィジカルAIの中核を「製造設備が周辺状況を認識し、判断し、自ら動くこと」に置く。その実現には、異なるロボットや製造設備をつなぐソフトウェアに加え、実工場で発生する多様な状況を学習するためのデータが欠かせないとしている。

狙うのは、単純な自動化を超え、例外状況でも設備同士が協調して稼働する状態の実現だ。NIPAで製造AX PMを務めるイ・ジュヌ氏は「科学技術情報通信部が捉えるフィジカルAIは、ヒューマノイドに限らない」と指摘する。自動化が相当程度進んだ製造現場では、既存設備やロボットの知能化と相互接続が重要になるという。

国産フィジカルAIのフルスタック化に向けた方向性も示した。NVIDIA Isaac SimやSiemensなど海外プラットフォームを全面的に排除するのは難しいものの、工場OSやAIモデル、設備制御など国内技術で代替可能な領域については、国家主導で技術確保と標準化を進める計画だ。

キム団長は「最終的に目指すのは『AI工場長』だ。AIが工場を自律運営できる環境を整えることが目標になる」と述べた。

キーワード

#フィジカルAI #工場OS #AMR #デジタルツイン #ロボット #AI #全北大学 #NIPA #科学技術情報通信部
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.