Grayscaleのピター・ミンツバーグ最高経営責任者(CEO)は、暗号資産市場を見極めるうえで重要なのは短期的な価格変動ではなく、機関投資家の資金流入や企業によるブロックチェーン活用の広がりだとの見方を示した。
CoinPostが28日付で報じた。ミンツバーグ氏はFortuneへの寄稿で、ビットコインの足元の急騰を過度に重視すべきではないと指摘した。
同氏は、ビットコインが直近1週間で約20%上昇し、2023年以降で最も強い3日間の上昇局面を記録したことに触れつつも、注目すべきは価格そのものではないと強調した。市場の方向性を判断する材料として、ビットコイン関連ETPへの資金流入と、企業のブロックチェーン活用拡大を挙げた。
新たな資産クラスが金融市場に定着する過程については、当初は懐疑や反発を招き、その後の議論を経て、最終的に金融システムに組み込まれていくとの認識を示した。BlackRock、Apollo、Goldman Sachsで20年にわたり資産運用に携わった経験を踏まえ、暗号資産も同様の道筋をたどっているとみている。
具体的なデータにも言及した。ミンツバーグ氏によると、2025年のビットコイン関連ETPでは、日次の資金流入が継続的に5億ドル(約750億円)を上回り、マイナーによる1日当たりの新規発行量の約12倍に相当するという。米国上場の現物ビットコインETPも、8週連続の資金流出の後、7月下旬から3週連続の純流入に転じた。
年初来ではなお流出超過の状態にあるものの、足元の下落率は、過去の「暗号資産の冬」でみられた70〜80%安に比べれば浅い水準にとどまったとも述べた。
背景として、機関投資家の認識変化も挙げた。EYが2026年に機関投資家約350人を対象に実施した調査では、回答者の73%が暗号資産への資産配分を増やす計画だと答えたという。同氏は、こうした動きについて、短期的な反発ではなく中長期の構造変化を示す兆候だと位置付けた。
企業側の動きも広がっている。2025年時点で、Fortune 500企業の経営陣の約60%が、自社でブロックチェーン関連の取り組みを進めていると回答したという。さらに、Fidelity、Visa、Stripeによるステーブルコイン事業にも触れ、暗号資産は投機対象にとどまらず、決済や企業インフラへと用途を広げていると強調した。
人工知能(AI)と暗号資産を対立関係で捉える見方にも異論を示した。AIエージェントが機械間の少額決済や即時の国際送金を必要とする場面では、ブロックチェーンが適した基盤になり得るとし、両技術は競合ではなく補完関係にあると主張した。中央集権型AIの開発で指摘される偏りや統制の問題についても、分散型技術やブロックチェーンベースのデジタルID基盤が緩和策になり得ると説明した。
Grayscaleが最近公表した別のレポートでも、こうした見方を裏付ける内容が示された。同社は、ビットコインとナスダック100指数の相関が低下する一方、金との相関は高まっていると分析。米国の債務拡大を背景に、価値の希薄化に備える取引への関心が強まり、投資家が分散資産としてビットコインを見直しているとした。
ミンツバーグ氏は寄稿の最後で、「それがシグナルであり、残りは雑音にすぎない」と述べた。短期的な価格変動ではなく、機関資金の流れと企業活用の広がりこそが、暗号資産市場の方向性を測る重要な指標だというのが同氏の主張だ。