トランプ政権が、半導体そのものに加え、半導体を搭載したサーバーやゲーム機など完成品への新たな関税を検討している。米IT業界では、AIインフラ投資の拡大局面でコスト負担が増し、データセンター建設や機器調達に打撃が及ぶとの懸念が強まっている。
米ITメディアArs Technicaが27日(現地時間)に報じた。業界では、AI向けデータセンター投資が加速する時期に関税が上乗せされれば、米国の技術競争力をかえって損なうとの見方が広がっている。
検討されているのは、半導体単体だけでなく、データセンター向けサーバーやゲーム機などの関連製品まで課税対象を広げる案だ。中古品や再生品が対象に含まれる可能性もあるという。
業界関係者は、こうした措置が半導体サプライチェーン全体のコストを押し上げ、米企業の設備調達負担を増やすとみている。
とりわけ影響が大きいとみられているのがデータセンター分野だ。Computer & Communications Industry Association(CCIA)は6月時点の試算で、関税が導入されれば米国内総生産(GDP)を年間約900億ドル押し下げ、2030年までに計画されているデータセンタープロジェクトの約20%が遅延または中止になり得るとした。
データセンター投資そのものが、米国外に流出する可能性を警戒する声もある。
消費者向け市場への波及も避けられないとみられる。スマートフォン、ノートPC、タブレット、スマートウォッチ、通信機能を備えた機器、車両などの価格上昇につながる可能性があるほか、最新のAI機能を搭載した新製品の投入が遅れる恐れもある。
業界は、消費者向け機器が米国でAIツールにアクセスする主要な接点だと指摘する。端末価格の上昇は、AI普及のスピードを鈍らせかねないという見立てだ。
半導体の需給環境も厳しい。世界的なデータセンター増設競争を背景に、高性能半導体の供給不足は2027年まで続くとの見通しが出ている。
こうした状況で追加関税が導入されれば、海外ファウンドリーへの生産依存度が高いNVIDIAやAMDなどの米半導体設計会社は、いっそう大きなコスト負担を迫られる可能性がある。Appleについても、関税負担のない海外競合に比べて不利になるとの懸念が浮上している。
政権内では、一定の緩和策も検討されている。外国企業が米国内の半導体生産に投資することを条件に、一定数量の製品を無関税で輸入できるようにする仕組みだ。
Howard Lutnick商務長官は、この方式を支持していると伝えられている。一方で、国別に税率を変える案も取り沙汰されており、企業のサプライチェーン戦略はさらに複雑になりかねない。
業界が問題視しているのは、無関税枠だけでは実需を到底賄えない点だ。技術業界の関係者は「ハイパースケーラーだけで無関税枠は埋まる」とした上で、「業界全体を見れば、米国内で今すぐ調達できないチップが多い。生産能力がまだ整っていないためだ」と語った。
別の関係者も「そもそも数字が合わない」と指摘した。
反発はさらに強まっている。主要産業団体の出身者は今回の構想について、「米国のAI覇権を進める手段としては、考え得る限り最も愚かなやり方になりかねない」と批判し、「スタートラインで自ら膝を折るようなものだ」と述べた。
この夏の初め以降、技術業界やロビー団体は政権との接触を増やしてきた。ただ、足元の議論は業界に不利な方向へ傾きつつあるとされる。
トランプ氏は今年初め、データセンターを明確に除外した限定的な半導体関税を導入していた。5月にはJamieson Greer米通商代表部(USTR)代表が、半導体関税の必要性に言及しつつも、「適切な時期と適切な規模」が重要だとの認識を示していた。
もっとも、商務省が7月1日、データセンター向けの例外措置を維持するかどうかを判断する報告書を提出して以降、流れが変わったとみられている。この報告書は現時点でも公表されていない。
業界は影響を最小限に抑えるため、AIサーバー向け半導体を例外扱いとし、想定される25%の関税率を10%に引き下げる案を提示した。半導体そのものと完成品の双方に課税する二重課税の仕組みは避けるべきだとも求めている。
米国内で半導体の生産能力を拡大するには時間がかかる。業界は、輸入半導体のコストを直ちに引き上げる政策は、AIインフラ拡大の流れと正面から衝突すると訴えている。