NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、業績発表後のカンファレンスコールで、多くのタスクではすでにAGI(汎用人工知能)の水準に達しているとの認識を示した。一方で、AGIの達成基準やマイルストーンを巡る議論については、「現時点ではやや無意味だ」として慎重な姿勢も示した。
米ITメディアのThe Vergeが27日(現地時間)に報じた。
OpenAIのAGI開発に関する質問に対し、フアン氏は「多くのタスクについては、われわれはすでにAGIを達成したと言える」と発言した。ただ、AGIの厳密な定義や判断基準には踏み込まなかった。あわせて、AIはプロンプトに応答するだけの段階を超え、自ら新たなスキルを学び、反復的に改善する自律型エージェントへ移行しつつあると説明した。
フアン氏が重視したのは、AGI達成の宣言そのものではなく事業性だ。重要なのは、AIが「生産的で有用な仕事」をこなせるかどうか、さらに「収益化につながるトークン」を生み出せるかどうかだとした。計算能力が増えれば生成できるトークンも増え、それが最終的に収益拡大につながるとの見方も示した。市場がそうした局面に入ったことで、企業はAIインフラ投資に一段と前向きになっていると分析した。
フアン氏がAGI達成に言及したのは今回が初めてではない。3月にレックス・フリードマン氏のポッドキャストに出演した際にも、「われわれはAGIを達成したと思う」と語っていたが、その時も具体的な基準は示さなかった。その後の対話では、10万のAIエージェントがNVIDIAのような企業を直接立ち上げて運営する可能性について「その可能性は0%だ」と述べ、受け止めを限定する発言もしていた。
今回の発言は、AGIを巡る業界全体の曖昧さを改めて浮き彫りにした格好だ。ビッグテック各社やAI業界は、AGIを人間並み、あるいはそれを上回る汎用知能と説明してきたが、知能そのものに統一した定義はない。このため、AGIについても何を満たせばよいのか、いつ達成とみなすのかという基準は各社で異なっている。
OpenAIも例外ではない。同社は定款でAGIを「経済的価値が高い大半の仕事で人間を上回る高度な自律システム」と定義している。一方、サム・アルトマンCEOは昨年、AGIは「それほど有用な用語ではない」と認めた。Microsoftとの関係とは別に、財務面を軸にした基準もあるとされ、少なくとも1000億ドルの利益を生み得るシステムが該当するという。最近では、マーク・チェン氏がAGI達成は「80%まで来た」と述べ、アルトマン氏も年末までに自身がAGIと呼ぶ何らかの成果を示せるとの考えを明らかにしている。
Anthropicのダリオ・アモデイCEOも、AGIは「不正確」な表現であり「マーケティング用語」だとして、代わりに「強力なAI」という言い方を好むと述べている。Metaは「個人向け超知能」、Microsoftは「人文主義的超知能」、Amazonは「有用な汎用知能」といった表現を使う。Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOは「特異点の入り口」と表現してきた。業界では新たな用語が次々と打ち出されているが、基準が明確になったわけではないとの指摘もある。
今回のフアン氏の発言は、AGIが技術的な終着点というより、企業ごとに異なる意味で用いられる緩やかな概念であることを改めて示した。NVIDIAはAGIの定義論争よりも、実務遂行力と収益化の可能性に焦点を当てた形だ。AI競争で何を指標とみなすのか、企業が「AGI」という言葉をどの基準で使うのかを巡る議論は、今後も続きそうだ。