ヒューマノイドロボット市場への期待が高まっている。ただ、投資対象となる関連企業やETFの中身は一様ではない。ヒューマノイドをテーマとするETFでも組入銘柄や運用の性格は大きく異なり、投資家には実際にどの領域へ資金を投じる商品なのかを見極める姿勢が求められる。
Cryptopolitanが8月25日付で伝えたところによると、バンク・オブ・アメリカ研究所はリポート「Physical AI, part 2: Humanoid robots」で、ヒューマノイドロボットの年間出荷台数が現在の約2万台から2035年には1000万台に拡大する可能性があるとの見通しを示した。
もっとも、この成長期待がそのまま全てのロボティクス企業に等しく波及するわけではない。投資対象にはロボットメーカーだけでなく、部品や半導体の供給企業、産業用自動化機器、ロボット向けソフトウェア企業まで含まれるためだ。同じ「ロボティクス株」と括られていても、事業構造や収益源には大きな違いがある。
ヒューマノイドへの直接的なエクスポージャーが大きい上場企業としては、香港市場に上場するUBTECH Roboticsがある。同社はWalkerシリーズのヒューマノイドのほか、教育用・サービス用ロボットも手がける。
2025会計年度のヒューマノイドロボット売上高は8億2060万元で、全社売上高の41.1%を占めた。販売台数は1079台だった。
一方で、業績面では成長企業特有のリスクも抱える。同期間の純損失は7億8980万元、営業キャッシュフローは7億8410万元のマイナスだった。ヒューマノイド売上は伸びているものの、安定収益化までにはなお距離があることを示している。
中国のUnitree Roboticsも、ロボット事業の比率が高い企業に位置付けられる。2025年の売上構成は、ヒューマノイドロボットが51.78%、四足歩行ロボットが41.62%だった。
ただ、同社は上海スター市場への上場手続きを進めている段階で、8月10日時点では流通市場での取引は確認されていない。米国投資家にとっては投資しにくい点も材料になる。
米国市場では、Symbotic、Serve Robotics、Richtech Roboticsなどがロボット専業に近い銘柄として挙がる。中でもSymboticは、倉庫自動化分野ですでに商業基盤を築いた事例とされる。
6月27日時点の受注残は約225億ドルに達した。ただ、2026会計年度第3四半期の売上高の90.5%は単一顧客に依存していた。大口顧客を基盤に急成長できる半面、顧客集中リスクも大きい。
Serve Roboticsは歩道配送ロボットを展開する。2026年第2四半期の売上高は324万ドル、純損失は6413万ドルだった。
現在のネットワークでは、2000台超の歩道配送ロボットと100台超のMoshiロボットを44都市に配備している。
Richtech Roboticsは、レストランやホテルなどサービス業向けにロボットを供給する。2026会計年度第2四半期の売上高は150万ドルだったが、ヒューマノイド事業は立ち上げ段階にあり、個別売上は開示していない。
視野を広げると、NVIDIAのようにロボット開発に必要な半導体やシミュレーションツールを供給する企業も関連銘柄に含まれる。もっとも、同社はロボット事業を独立項目として開示していない。
2027会計年度第1四半期の売上高は816億2000万ドル。このうち、ロボット関連を含むエッジコンピューティング部門の売上高は63億7000万ドルだった。
このため、NVIDIAはロボット産業の成長恩恵を受ける銘柄ではあるものの、ロボットそのものを販売する専業企業とは投資の性格が異なる。
Teradyneも間接的な関連銘柄として挙げられる。子会社Universal Robotsの協働ロボットと、Mobile Industrial Robotsの自律走行搬送ロボットを通じ、2025会計年度のロボット関連売上高は3億830万ドルだった。
これは全社売上高31億9000万ドルの約10%に当たる。
精密減速機や駆動部品を手がけるHarmonic Drive Systems、Leader Harmonic Drive Systemsも注目先とされる。ヒューマノイド生産が複数メーカーに広がれば、完成品メーカーの勝敗を見極めなくても、主要部品の需要増の恩恵を受けられるとの見方があるためだ。
ETFに目を向けると、投資手法の違いはさらに鮮明になる。KraneSharesのKOIDは、センサー、コンピューティング、測定機器、自動車部品など、Physical AIのサプライチェーン全体に幅広く投資する色合いが強い。
これに対し、RoundhillのHUMNはUBTECH Robotics、Tesla、Harmonic Drive Systems、Leader Harmonic Drive Systems、現代自動車などの比率が高いという。両ETFは2025年6月に約3週間差で設定されたが、上位組入銘柄は大きく異なっていた。
KOIDがロボット産業全体の供給網に投資する「Physical AI」バスケットに近いとすれば、HUMNはヒューマノイド開発やハードウェアとの結び付きが強い銘柄を中心に組み入れる構成といえる。
もっとも、投資リスクは小さくない。最大の焦点は、ヒューマノイドがデモ段階を超え、商業的な有用性と経済性を実証できるかどうかにある。出荷台数の予測が、直ちにメーカーによる大規模発注を意味するわけではない。
実際の導入が想定より遅れたり、費用対効果が十分に示されなかったりすれば、足元の成長期待は後退しかねない。
中国を巡る政策要因も不確実性として残る。中国企業がロボット自動化を急速に進める一方、輸入規制や関税が成長ペースに影響する可能性があるためだ。
結局のところ、ロボティクス投資では単に「ロボット株」という名称だけで判断せず、どの形でロボット産業へのエクスポージャーを持つのかを確認する重要性が増している。UBTECH Roboticsのような直接製造企業、NVIDIAやTeradyneのような部品・半導体関連、倉庫自動化のSymbotic、配送ロボットのServe Robotics、さらにヒューマノイドETFまで、同じテーマに括れても収益構造とリスク要因はそれぞれ異なる。
特にヒューマノイドETFについては、名称だけで投資判断を下すのではなく、実際の組入銘柄や構成比率、手数料まで確認すべきだとの指摘がある。市場が本格成長局面に入ったとしても、どの企業やETFが最終的な恩恵を取り込むのかは、なお見通し切れていないためだ。