AIエージェントの性能を左右する要素として注目される「ハーネス」(写真=Shutterstock)

AIエージェントの実力を左右するのは、大規模言語モデル(LLM)そのものだけではない。ツールの利用や結果の検証、長時間にわたるタスクの継続を支える周辺ソフトウェア「ハーネス」が、もう一つの競争力として存在感を高めている。

Gigazineによると、AIソフトウェア開発を手がけるEarendilは、この構図を「エージェント=モデル+ハーネス」と整理した。ChatGPTやClaudeのようなモデルは、質問を理解して回答を生成できる一方、Webで最新情報を検索し、ファイルを修正し、計算結果を検証し、誤りがあればやり直すといった一連の処理には、別途実行基盤が必要になるという。

Earendilは、一般的なハーネスの機能を4つに分類している。1つ目は、モデルの役割や行動原則を定めるシステムプロンプト。2つ目は、Web検索やコード実行、メール作成などの外部作業を担うツールだ。3つ目は、「作業→結果確認→次の行動決定」を繰り返すエージェントループ。4つ目は、OpenAIやAnthropicなどベンダーごとに異なる呼び出し方式やデータ形式の差異を吸収する変換レイヤーとしている。

Earendilが開発しているオープンソースのハーネス「Pi」も、こうした構造を採用する。複数のAIベンダーのモデルを単一の環境で切り替えて利用できるほか、システムプロンプトやツール、拡張機能などを利用者の作業スタイルに合わせて変更できる。共有された拡張機能は5000件を超えたという。

ハーネスの重要性を示す事例として、NVIDIAのAIエージェントシステム「AVO」も挙げられる。AVOはClaude Opus 5に加え、持続型メモリやツール利用、監督システムなどを組み合わせた構成を採用。ARC-AGI-3公開セットの25環境・183レベルをすべて解き、100点を記録した。NVIDIAによると、長時間タスクではメモリが過去の結果を保持し、監督システムが反復的な失敗時に別の戦略を選ぶよう促すという。

もっとも、この結果を、Opus 5単体の約30%のスコアと単純比較し、ハーネスが性能を3倍超に高めたと受け取るべきではない。NVIDIAも、両者は評価条件が異なり、ハーネス単独の効果を切り分けて測定した結果ではないと説明している。むしろ、モデル単体のベンチマークだけでは、実運用に近いエージェントシステムの能力を評価しにくいことを示す事例だとしている。

AIエージェントを巡る競争は、より高性能なモデルを確保するだけでは決まらない。何を記憶し、どのツールを使い、失敗時にどう復旧しながら長時間の作業を続けるか。そうした設計を担うハーネスが、実運用での性能差を生む重要な競争軸になりつつある。

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