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Anthropicが新規株式公開(IPO)を前に、投資家に対して30兆ドル(約4500兆円)超の総アドレス可能市場(TAM)を示す見通しとなった。SpaceXが上場前に示した28兆5000億ドルを上回る水準で、AIの適用範囲を広く見積もった強気の成長シナリオとして注目を集めそうだ。

26日付のCryptopolitanによると、Anthropicが想定するTAMは30兆ドル超に達する見込み。TAMは、企業が参入市場の需要を最大限取り込んだ場合に見込める潜在的な年間売上規模を示す指標で、実際の売上高や短期的な業績見通しと一致するものではない。

IPOを控える未上場企業は、産業データや投資銀行の分析モデル、将来需要の予測などをもとにTAMを算定し、投資家に成長余地を訴えるのが一般的だ。AnthropicもAIモデルの活用領域を広く設定し、潜在市場を大きく見積もったとみられる。

対象領域には、ソフト開発や調査業務のほか、顧客対応、金融、メディア、ヘルスケア、物流などが含まれる可能性がある。AIが代替あるいは補完できる業務全体を市場規模に織り込んだ格好だ。

もっとも、AI市場はなお拡大途上にあり、Anthropicが実際にどこまで市場を取り込めるか、また収益化をどの程度のスピードで進められるかには不確実性が残る。

比較対象として挙がるSpaceXも、5月の上場関連書類で28兆5000億ドルの市場機会を示していた。このうち26兆5000億ドルをAI関連と見積もり、「人類史上で最も大きい実行可能な市場」と表現したが、ウォール街では既存の上場事例と比べて過大だとの見方も出ていた。

AnthropicのTAMは、上場テクノロジー企業の実績と比べても際立つ。S&P1500に組み入れられているテクノロジー企業191社の2025年の合計売上高は2兆4000億ドルで、Anthropicが示す潜在市場はその12倍超に相当する。

投資家の関心を集めるのは市場規模だけではない。足元の業績も急拡大している。Anthropicの第2四半期売上高は116億ドル(約1兆7400億円)と、前四半期から2倍超に増加し、四半期ベースで初めてOpenAIを上回ったという。

一方、OpenAIの6月終了四半期の売上高は67億ドル(約1兆50億円)で、前四半期の57億ドルから18%増にとどまった。損失は拡大し、営業利益率はほぼ損益分岐点近くまで低下した。

Anthropicは小幅ながら営業黒字を確保した。ただ、同社は調整後指標の具体的な算定方法を明らかにしていない。投資家向け資料では、株式報酬費用を除外して調整後利益を算出したとしている。

競争環境にも変化が出ている。2026年に入りChatGPTの成長に鈍化がみられる中、開発者向け市場ではAnthropicの「Claude Code」の利用が拡大しているという。このため、OpenAIは戦略や経営体制の見直しを迫られているとの見方もある。

もっとも、収益性の確保は両社に共通する課題だ。OpenAIは、料金を支払わない数億人規模のChatGPT利用者にもサービスを提供しており、巨額の運用コストを抱える。企業がAI投資に慎重姿勢を強める中、新モデル2種の価格を引き下げたほか、一部顧客はより低価格の中国製AIモデルに移行しているとされる。

Anthropicも価格競争とは無縁ではない。IPOを控え、低価格の中国AIモデルとの競争を巡る投資家の懸念を和らげることに力を入れている。AIモデルの価格低下が続けば、巨額のTAMを掲げても、実際の市場シェア獲得や収益化のスピード、利益率の維持が企業価値を左右することになる。

OpenAIはAIの安全性や運用面でも課題を抱える。一部の自律型エージェントがテスト過程で制御を逸脱し、他社をハッキングした事例が発生したとして、新モデル開発の一部を停止し、統制を強化したという。

AnthropicのIPOで焦点となるのは、30兆ドル超というTAMの大きさそのものではない。巨額の潜在需要を、どこまで早く実際の売上高と利益に転換できるか。急成長を続ける同社が、投資家の期待を現実的な企業価値へ結び付けられるかが問われる。

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