中国のヒューマノイドロボット企業Unitreeの株価が、上場直後に付けた高値から約45%下落した。上場初日の急騰を受けて膨らんだロボット関連株への期待が、実需や業績に比べ先行し過ぎているのではないかとの見方が強まっている。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanによると、Unitreeは19日に上海証券取引所へ上場した。初日の株価上昇率は460%に達したが、その後は25日までに3営業日続落し、高値から時価総額で約300億ドル(約4兆5000億円)を失った。
今回の急落は、Unitreeの技術力そのものへの評価というより、ロボット産業の成長期待を市場がどこまで先取りして株価に織り込んだかを映した動きと受け止められている。Unitreeの企業価値は上場初日に一時660億ドル(約9兆9000億円)規模まで膨らんだ。
その後は利益確定売りが広がって急速に反落し、25日には下げが一旦一服した。
市場の反応が大きかった背景には、初日の上昇率が中国IPOの平均を大きく上回ったことがある。直近3年間の中国IPOにおける初日平均リターンは226%で、Unitreeはその約2倍の水準だった。
上場前後の過熱はUnitreeに限った話ではない。上場の1カ月前には半導体企業CXMTも、上海市場への上場初日に466%上昇しており、中国市場全体で新規上場銘柄への過熱感が続いていることが改めて浮き彫りになった。
こうした動きを受け、IPO制度そのものにも批判が向かった。China Europe Capitalの会長アブラハム・ジャンは今回のIPOについて、「株価をつり上げた後、高値で売り抜けるためのものだ」と主張した。
上場プロセスのなかで利益を得る主体が別に存在し、その一方で一般株主が損失を被るおそれがあるとも指摘した。
もっとも、業績面では一定の裏付けもある。Unitreeの2025年売上高は16億9900万元で、主力事業の売上総利益率は60.13%だった。ヒューマノイド事業が単なるコスト負担の段階にとどまっていないことを示す材料とみられた。
一方で、2026年1~3月期の調整後純利益は4000万元と53%減少した。ロボットが走行やダンス、武術動作を披露するデモで注目を集めた半面、本格的な商用需要はなお限定的だとの指摘も出ている。
このため、足元の収益性だけで産業全体を評価すべきではないとの反論もある。China Southern Asset Managementのガオ・シンクンは、ロボット産業を初期の赤字局面が長かった中国の電気自動車産業になぞらえ、「利益だけで判断するのは公平ではない」と述べた。
中国株式市場の制度面も、価格のゆがみを増幅する要因として挙げられている。中国の取引所は上場前の審査に加え、公募価格の算定プロセスにも関与するため、需要が急増しても主幹事が公開価格を機動的に調整しにくいという。
加えて、空売りの担い手が限られ、投資家が規制当局による少額株主保護を期待しやすい市場構造も重なり、割高なIPOをけん制する力が働きにくいとの見方が示された。
Trinity Synergyのヘッジファンドマネジャー、ウィアン・ウィーユエイはこの構造について、「10元の価値しかないIPO株が100元で取引を開始し、その後数年かけて下落する可能性がある。これは搾取だ」と語った。
需給面の制約も無視できない。2026年1~7月の上海市場の新規上場企業数は21社にとどまったのに対し、香港市場は同期間に104社だった。
ただ、Unitreeが事業基盤を欠く企業ではないことも確かだ。Unitreeは世界最大のロボット犬メーカーであり、ヒューマノイドでも出荷台数ベースで世界2位のメーカーとされる。
Counterpoint Researchによると、Unitreeの2026年上半期のヒューマノイド出荷台数は7000台を超え、世界シェアは31%に達した。同期間の世界全体のヒューマノイド出荷台数は2万2000台超と、前年同期比で約300%増加した。
もっとも、出荷の伸びに対し、実需やソフトウェアの成熟度はなお見極め段階にある。ワン・シンシン最高経営責任者(CEO)は上場翌日、ロボット知能分野が「ChatGPTの瞬間」に近づいていると述べる一方、実質的なソフトウェアの飛躍には、楽観的に見ても2~3年、長ければ5~10年かかる可能性があると明らかにした。
Unitree株の急落は、ロボット産業の成長可能性そのものを否定したというより、未実現の未来を市場がどこまで先回りして評価していたかを示した格好だ。投資家が見込む市場拡大のスピードと、企業が実際に収益を本格化させる時期のずれが、当面の焦点となりそうだ。