SpaceXは米ルイジアナ州バーミリオン郡に1000億ドル(約15兆円)を投じ、Starship工場と発射台を備えた大規模な宇宙拠点を建設する。テキサスで整備を進める「Starbase」を上回る規模の拠点とし、Starshipの大量打ち上げや衛星網構築の基盤とする考えだ。
25日付のCNBCなどによると、ジェフ・ランドリー・ルイジアナ州知事は、SpaceXが州沿岸部にStarship工場と発射台を建設すると明らかにした。SpaceXは2027年に最初の施設の建設に着手し、2029年の初打ち上げを目標としている。
一方、ルイジアナ州経済開発局(LED)は、着工は2027年末、初期稼働は2030年になるとの、より慎重な見通しを示した。
SpaceXの社長兼最高執行責任者(COO)を務めるGwynne Shotwell氏は、「Starbase Louisiana」を推進剤生産、発電、深海輸送、機体処理施設、空港などを備えた自立型の宇宙基地にすると説明した。
候補地とされるピーカン・アイランドの面積は約12万5000エーカー(約1億5300万坪)。テキサスのStarbaseの約350エーカー(約42万8500坪)を大きく上回る。複数の発射塔を整備できる余地があり、燃料となるメタンの確保でも有利だという。深海にアクセスできる運河に近く、ロケットや貨物の輸送面でも優位性があるとしている。
SpaceXがルイジアナに注目する最大の理由は、打ち上げ拠点の拡張余地にある。最終的には1日に数十回、年間数千機のStarshipを打ち上げ、Starlinkや軌道上データセンター向け衛星などによる大規模な衛星網の構築を目指す。
現在、テキサスのStarbaseには稼働中の発射場が1カ所、建設中が1カ所ある。フロリダ州ケープカナベラルでも発射台を3基追加建設しているが、テキサス、フロリダともに用地には限りがある。
その点、ルイジアナは比較的広い用地を確保しやすく、打ち上げ空域を巡る競合も少ないとされる。南向きの立地は極軌道への打ち上げにも有利で、SpaceXが構想する軌道上データセンター向け衛星の多くがこうした軌道を使うと見込まれることから、打ち上げ効率の向上につながる可能性がある。
雇用面の波及効果も大きい。SpaceXは少なくとも3000人、最大で1万人の雇用創出を約束した。LEDは今後10年間で直接雇用3000人、平均年俸9万2600ドル(約1389万円)を見込み、建設がピークを迎えた際には3万人超が投入されると予測している。
一方で、環境面は不確定要素として残る。ピーカン・アイランドは水鳥や野生動物の生息地で、海岸線は毎年1〜3メートルずつ後退しているという。
SpaceXは敷地の一部だけを開発し、残る区域は野生動物の生息地や釣り、狩猟、ボートなどのレジャー空間として保全する方針を示した。防波堤の建設などを通じ、海岸侵食の防止にも取り組む計画だ。
ただ、テキサスのStarbaseでは生態系への影響を巡る批判や法的紛争が続いてきた。ルイジアナでも環境問題が主要な論点となる可能性がある。
Starshipは、完全再使用を目標に開発が進む史上最大級かつ高出力のロケットとされる。SpaceXは2023年以降、13回の試験飛行を実施しており、14回目の飛行では上段が初めて軌道に到達する可能性も指摘されている。
もっとも、ブースターと上段を1回の飛行でともに発射台へ帰還させることには、まだ成功していない。
SpaceXはこれまでにStarship開発へ80億ドル(約1兆2000億円)超を投じてきた。イーロン・マスク氏は、Starshipが週に複数回飛行できる段階に達すれば、Falconロケットを退役させる考えを示したこともある。
Starshipの大量打ち上げと完全再使用の実現は、SpaceXの将来を左右する重要な要素となる。
マスク氏による米南部での投資拡大も続いている。xAIはメンフィスで「Colossus」データセンターと発電所の整備を進め、Teslaはテキサス州オースティンを軸に工場とロボタクシー事業を拡大している。
さらにTesla、SpaceX、Intelは、テキサス州グライムズ郡で大規模なAIチップ工場の計画も進めている。
テキサスのStarbaseが独自の郵便番号や消防・警察組織を備え、事実上の企業都市へと変貌しつつあるなか、SpaceXがルイジアナでも同様の都市機能を備えた拠点を築くかどうかは、現時点では明らかになっていない。