Googleが法務向けAI「Gemini Enterprise for Legal」を発表した。写真=Shutterstock

Googleは、ローファームや企業の法務部門向けAI「Gemini Enterprise for Legal」を発表した。契約審査や規制変更への対応、文書検索などの法務実務を支援するもので、既存の業務システムと連携できる点や、顧客データを基盤モデルの学習に使わない方針を打ち出した。

Business Insiderが25日(現地時間)に報じたところによると、Googleは同日、この新サービスを公開し、法務AI市場の本格開拓に乗り出した。

同サービスは、Geminiを基盤とした法務向けエージェント群を組み合わせたパッケージだ。ローファームなどが利用する既存のデータ保管・管理システムに接続し、契約レビューや交渉、規制変更の追跡、訴訟記録や社内文書の検索などを支援するという。

Googleは、汎用AIだけでは法務実務の要求を十分に満たせないとみている。法務分野では信頼性と正確性が重要であり、汎用AIではその水準に達しないとの認識をブログで示した。製品開発にあたっては、Cleary GottliebとFreshfieldsの弁護士の意見を反映したとしている。

データの取り扱いも強く打ち出した。顧客データやモデルの出力、そのほかの情報について、Googleは基盤モデルの学習には利用しない方針を明らかにした。機密性と正確性が重視される法務分野では、データ管理とセキュリティが導入判断の重要な要素になるためだ。

連携先もあわせて示した。訴訟分野ではEverlaw、Relativityと協業し、案件・契約管理分野ではiManage、NetDocuments、DocuSignと連携する。Thomson Reuters、Harvey、Legoraもパートナーに加わる。顧客企業は、Geminiエージェントを社内文書が保存されたシステムに接続し、すぐに活用できるとしている。

今年に入り、法務AIはビッグテックやAI企業の競争領域として存在感を増している。Anthropicは年初から、文書レビューやドラフト作成向けプラグインで弁護士市場の開拓を進めてきた。OpenAIは、Ironclad創業者のジェイソン・ベーミッヒ氏が率いる法務ソフトウェアチームを立ち上げている。Microsoftも今年、法務エージェントを披露した。

市場では期待が高まる一方、警戒感も根強い。企業顧客はローファームに対し、より迅速な処理とコスト効率を求めている。ローファーム側には、AIやエージェントで代替できる業務を従来通り請求できるのかという課題が突きつけられている。企業の社内法務でも、自動化を進めて外部ローファームへの依存を減らし、法務コストを抑えたいという需要が強まっている。

もっとも、株式市場の反応は比較的限定的だった。法務テック関連銘柄は25日の取引開始後、おおむね横ばいか小幅安で推移した。Thomson Reutersは初のAIモデル発表翌日に約3%下落し、DocuSignも2%未満の下落だった。

2月の反応とは対照的だ。当時はAnthropicによる小規模な法務関連の発表だけで、法務テックや情報サービス企業の時価総額が数百億ドル規模で減少した。投資家は、Anthropicの法務市場参入が既存事業者を圧迫する可能性を懸念していた。

これに対しGoogleは、既存の法務テック企業を置き換えるのではなく、既存システムとの接続を前面に出した。パートナー企業を掲げ、ローファームの既存環境にGeminiエージェントを組み込む構成を採った点が特徴といえる。法務AIの競争軸は、モデル性能だけでなく、データの保管先や業務システムとの連携、顧客情報の保護へと広がりつつある。

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