OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は25日(現地時間)、AIはまだ消費者市場を大きく変える「iPhoneの瞬間」を迎えていないとの認識を示した。今後の競争はモデル性能の向上だけでなく、一般ユーザーが無理なく使える製品体験をいかに設計するかが焦点になるとの見方を示した。
ITメディアの9to5Macによると、アルトマン氏は最近出演したポッドキャスト番組で、現在のAI業界はiPhone登場前のスマートフォン市場に似た段階にあると語った。
番組では、デイビッド・センラ氏が進行役を務める中、Windows CE端末やNokia端末、Palm OS端末が使われていた時代に言及した。当時のスマートフォンは、一部ユーザーにとっての「ポケットの中のコンピュータ」にとどまっていたが、iPhoneの登場で大衆向け製品へと一気に広がった。アルトマン氏は、現在のAIもこれに近く、OpenAIを含む各社は技術を日常生活に自然に溶け込ませる形をまだ見いだせていないと説明した。
この発言は、AI開発競争がモデル性能や企業導入を軸に加速する一方、消費者向けサービスでは決定的な転換点がなお訪れていないとの認識を示したものだ。次の段階では、単純な性能改善よりも、一般ユーザーが意識せず使える体験をどう作るかが重要になる。
アルトマン氏はAppleの製品戦略にも触れた。スティーブ・ジョブズ氏が、多くの「良いアイデア」にあえて「ノー」を突き付けることで、本当に重要な少数の製品に集中できると語っていた点を引き合いに出した。そのうえで、自身は良いアイデアを整理し、より大きなアイデアを守ることが得意ではないと率直に認めた。製品と研究テーマが同時に膨らみやすいAI企業にとって、選択と集中が避けて通れない課題であることをうかがわせる。
AIが経済に与える影響のスピードについても、一部で見方を修正した。アルトマン氏は、AIが経済をどの程度の速さで変えるかについて、自身が過大な期待を抱いていたと認めた。一方で、AIの普及が新たな事業機会を生むとの見通しは維持し、今後は「人々が始める小規模事業の最大のブーム」が起こり得ると述べた。
その背景として、2つの要因を挙げた。1つは、AIによってより少ない資源で事業を立ち上げ、運営できるようになること。もう1つは、AIから距離を置く領域に生まれる反動需要だ。アルトマン氏は、「AIと何の関係もない」からこそ成功する事業もあり得るとし、人々が「真正性のある、非技術的な体験」を求める可能性があると見通した。
こうした発言は、AIがあらゆる産業を同じ形で代替・吸収していくという見方とは一線を画す。AIを活用する企業が増える一方で、非技術的な体験や人間的な接点を前面に押し出す事業にも、なお需要が残る可能性があるためだ。
AI市場の今後の競争軸は、モデル性能だけではない。消費者との接点をどう築くか、製品をどこまでシンプルにできるか、さらに技術を過度に前面に出さない事業設計ができるかどうかも、重要な差別化要因になりそうだ。
アルトマン氏のメッセージは、大きく2点に整理できる。第1に、AI業界はまだ大衆市場を変える代表的な製品を生み出していないこと。第2に、その過程では機能を足すこと以上に、「何を捨てるか」を見極める力が重要だということだ。あわせて、AIの経済的な波及は想定より緩やかになる可能性がある一方、事業機会そのものはより幅広い形で広がるとの見通しも示した。