画像=ChatGPT生成

金融分野のマイデータ制度が、個人から個人事業主・小規模事業者へと対象を広げる。サービスの役割も、情報の照会・管理中心から、金融に関する申請や権利行使を支援するAIエージェントへと拡張する見通しだ。金融グループはグループ内でのデータ共同活用に、フィンテック各社はAIを活用した融資や個人事業主向け市場の拡大に、それぞれ新たな事業機会を見いだそうとしている。

金融委員会(金融委)が25日に公表した「AI時代のマイデータ発展方策」によると、柱は個人事業主向けマイデータの導入、「My AI Agent(マイAIエージェント)」の導入、データ活用範囲の拡大の3点だ。現在は個人に限られている信用情報の送信要求権の主体とマイデータサービスの対象を、「すべての信用情報主体」へ広げる方針を打ち出した。

◆個人事業主向けに拡大、売上や納税情報も一元管理へ

個人事業主と小規模事業者が対象に加われば、事業活動の各所に分散している情報を一元的に管理できる基盤が整う。

現状では、個人事業主の情報は個人信用情報と企業信用情報が混在し、売上や納税など事業関連データも複数の機関に分散している。金融委が引用した2023年の調査では、個人事業主の61%が売上や手数料など分散した情報の管理に負担を感じていると答えた。金融機関やフィンテックの一部はCashnote、SohoMate、IBK BOXなどの関連サービスを提供しているが、共通の認証基盤や情報共有の仕組みがなく、サービス拡張には限界があるとみている。

改編案では、個人事業主名義の金融情報、商取引情報、公共情報などをマイデータとして統合する方針を盛り込んだ。対象には、預金・貸出、貿易金融、カード、保険などの金融情報に加え、売上、決済金額、取引品目、国税・地方税・4大保険の納付内訳、事業者登録情報、さらに電気・水道・ガス料金や通信費も含まれる。

金融委は、こうした情報の統合によって事業所の営業実態や将来の成長性を把握し、代替信用評価に活用できるようにする考えだ。従来の金融取引履歴に加え、実際の売上や各種納付情報を組み合わせて分析できるようになる。個人事業主向けマイデータの詳細課題としても、「代替信用評価活用のための多様な統合情報の提供」を明記した。

マイデータ事業者も、個人事業主市場の拡大余地に注目している。

BankSaladの関係者は「個人事業主向けマイデータは参入し、利用者利便を高めるべき重要分野だ」とした上で、「AIエージェントが情報の収集・分析にとどまらず、必要な業務まで担うようになれば、個人向け以上に個人事業主領域で大きな便益を提供できる可能性がある」と話した。

◆照会中心から実行支援へ、AIエージェント導入を推進

マイデータの役割自体も大きく変わる。これまでは利用者の資産・信用情報を呼び出して提示し、金融商品を推薦する機能が中心だったが、今後は利用者の指示に基づいて、金融に関する権利行使や申請手続きまで支援する方向へ広げる。

その中核となるのが、金融委が導入を進めるマイAIエージェントだ。想定例として、金利引き下げ要求権や債務調整要求権の行使、ボイスフィッシング被害救済の申請、政策資金や借り換え融資の申請、クレジットカード手数料・年会費の減免要求、未請求の保険金の探索と自動請求などを挙げた。

フィンテック業界では、このうち融資分野がAIエージェントと最も早く結び付きやすいとみている。金利比較や照会から借り換えまで、関連インフラが他の金融分野に比べて相対的に整っているためだ。

金融情報の分析・提案サービスを高度化してきたBankSaladも、AIエージェントを活用し、利用者の金融行動の実行段階まで支援する方向でサービス拡張を検討している。

同社関係者は「AIエージェントが実行機能を備えた場合、最も早く事業化でき、利用者に実質的な支援を提供しやすい分野は融資だとみている」と述べ、「現在、融資分野を優先対象として検討している」と明らかにした。低金利の融資先を探すだけでなく、実際の借り換え手続きまでつなげる形を想定しているという。

AIエージェントが適時に業務を実行できるよう、同意取得の方式も見直す。金融委は、サービスの目的、範囲、方法、期限などを具体的に定めた場合、事前の一括同意を認める方針だ。

BankSaladの関係者は「今回の制度改正で重要なのは、利用者が毎回個別に同意しなくても、事前に定めた目的と範囲の中でAIエージェントが必要な業務を適時に処理できるようになる点だ」と説明した。

◆金融グループはデータ共同活用に期待

銀行業界では、グループ会社間で個人信用情報を共同活用できる制度整備に関心が集まっている。

現状では、金融持ち株会社グループ内にマイデータ事業者があっても、グループ会社間での情報共有や活用には制約がある。金融委は、利用目的や情報項目、管理責任などをあらかじめ明確に告知した場合、持ち株会社傘下のグループ会社や戦略的提携先が共同利用者としてデータを活用できるよう制度を見直す計画だ。

銀行業界関係者は「非銀行の金融資産情報や取引明細を該当業態のグループ会社と共有できれば、証券、保険、消費者金融など各分野の専門性を生かしたマイデータ分析や金融提案、相談対応が可能になる」と期待を示した。

グループ内の複数の系列会社が、それぞれマイデータ利用者の獲得や維持を巡って競ってきた構図も緩和される見通しだ。同関係者は「利用者は系列会社ごとに個別サービスを使い分ける混乱が減り、金融グループ側もマイデータ運営の効率を高められる」と話した。

金融委はデータ共同活用に加え、マイデータ事業者が本業で収集した情報と、マイデータ事業者として確保した情報を結合・分析できるよう関連基準も整備する方針だ。暗号資産と政策庶民金融に関する情報をマイデータ提供範囲に追加する案も進める。

一方、AIが実際の金融行為を担う領域が広がるほど、責任の所在や消費者保護の基準を具体化する必要があるとの指摘も出ている。金融委は、AIエージェントを活用する場合、代理実行の全過程を記録・保存し、実行理由や内容、結果などを利用者に説明する義務を新設する予定だ。

金融委は今年下半期から、関連する信用情報法の改正を進める。法改正前でも要件を満たす事業者については、革新金融サービス指定を通じて試験運用を認める方針だ。

別の業界関係者は「金融当局がマイデータ活性化に向けて継続的に新たな取り組みを進めている点は前向きに評価している」とした上で、「制度上の成果や数値だけでなく、現場で幅広く活用され、最終的に消費者の利便向上につながることを期待したい」と語った。

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