画像=ChatGPT

人工知能(AI)がサイバー脅威の構図を一変させるとの見方が広がる一方、実際には既存のリスクをより速く、より大きく増幅させる側面が強い――。こうした指摘が出ている。

TechRadarが12日(現地時間)に報じたところによると、企業が直面する主要な脆弱性は5年前や10年前と大きく変わっていない。未適用のパッチ、不十分なID・アクセス管理、過大な権限付与、脆弱なサードパーティー連携、資産管理の不備は、依然として主要な侵入経路となっている。

その一方で、AIはこうした従来型の脆弱性を見つけ出し、悪用するスピードと規模を大きく変えつつある。これまで時間や高度な技術、執拗な試行を要した偵察、マルウェアの派生型作成、フィッシング文面の生成、ラテラルムーブメントといった攻撃プロセスの自動化が進んでいる。

高度な技能を持たない攻撃者でも、AIを使えば精度の高い攻撃を大規模に仕掛けやすくなる。ディープフェイクや音声複製はソーシャルエンジニアリングの説得力を高め、マルウェアの変種生成を加速させることで、検知回避につながる可能性もある。

問題は、AIを「まったく新しい脅威」としてだけ捉えることで、対策の焦点がずれてしまう点にある。経営陣や取締役会がAIリスクに関心を高めること自体は前向きだが、議論がAI向けの専用対策に偏れば、基本的なセキュリティ課題が後回しになりかねない。

パッチ管理、資産管理、サプライチェーン上の露出把握、権限管理といった長年の課題は、なお解決されていない。AI時代には、こうした基礎対策の重要性がむしろ一段と増している。

このため企業は、新たなツールの導入を急ぐよりも、基本原則の強化に軸足を置く必要がある。どの組織も100%安全とは言えず、AIが未知の脆弱性を見つけ出す可能性も否定できないためだ。

それでも対策の要点は変わらない。優先順位を明確にし、脆弱性を是正し、露出を減らすことだ。レッドチーム演習や机上訓練にはAIを使った攻撃シナリオを組み込み、インシデント対応チームはAIが生成・改変した証拠を扱えるよう備える必要がある。

社内でAI導入が進めば、アタックサーフェス(攻撃対象領域)も広がる。攻撃者はAIワークフローや開発環境、プロンプトインジェクションを標的にできるほか、正規のコンテンツに悪意ある指示を紛れ込ませ、AIシステムに意図しない動作を引き起こすことも可能になる。

もっとも、これも入力検証、サプライチェーンセキュリティ、データ完全性といった、従来からあるセキュリティ原則の新たな適用例といえる。

AI時代のセキュリティで重要なのは、過度な恐怖に振り回されることではなく、何が変わり、何が変わらないのかを正確に見極めることだ。

AIは攻撃と防御の双方を加速させる。しかし、組織防衛の出発点が基本的なセキュリティ体制の整備、責任の明確化、リスク許容度の設定、一貫した実行力にあるという点は変わらない。

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