米国で電気自動車(EV)の航続不安を和らげるには、充電器の設置数を増やすだけでは不十分だとの見方が出ている。充電拠点が実際に存在していても、高速道路上でその存在を把握しにくければ、利用者にはインフラが足りないように映るためだ。
EV専門メディアのElectrekによると、ドナルド・トランプ米大統領は最近、ラスベガスでの政治集会で、EVの航続不安を一種の「病気」と表現した。これを受けてElectrekは、問題の本質は充電インフラそのものの不足だけでなく、ドライバーからの見えにくさにもあると指摘した。
トランプ大統領は、高速道路を走っていてもEV充電所を案内する表示や標識をほとんど見かけないと述べた。Electrekは、この発言がEV利用者の不安の一因を突いていると評価している。
ガソリン車のドライバーは、高速道路でガソリンスタンドの案内標識を繰り返し目にする。次のスタンドまでの距離や出口の位置を事前に把握できるため、燃料供給網への信頼感も生まれやすい。
これに対し、EVドライバーは同水準の視覚情報を得にくいとされる。特に米国の中西部や内陸部の一部では、高速道路を走行中に充電所の案内標識を見つけにくいとの指摘がある。
このため、充電器が設置されていても、ドライバーがその存在を認識できなければ、実際以上に充電インフラが不足していると受け止められやすい。解決策としては、充電所の案内標識を高速道路の標識システムにより積極的に組み込むべきだとの声が出ている。
長距離移動の途中でも一定間隔で充電拠点の位置を確認できれば、充電器数を大幅に増やさなくても、インフラに対する心理的な安心感を高められるという考え方だ。
こうした議論は、EVインフラ政策の焦点が、充電器の台数や充電速度といったハード面だけでなく、ドライバー体験へと広がっていることを示している。充電所をどれだけ整備したかに加え、どれだけ容易に見つけて利用できるかも、EV普及を左右する要素になりつつある。
自動車メーカー側でも、充電体験の簡素化に向けた取り組みが進む。General Motors(GM)の「GM Energy Pass」は、Cadillac、Chevrolet、GMCのEV利用者が複数の充電アプリや決済手段を個別に管理しなくても、提携充電網を利用できるようにする仕組みだ。
車両を充電器に接続すれば、別途アプリをダウンロードしたり、スマートフォンやクレジットカードを取り出したりせずに充電を始められるとしている。
もっとも、Electrekが重視するのは決済の利便性以上に、充電網の存在をドライバーに継続的に「見せる」ことだ。充電そのものがどれほど簡単になっても、長距離走行中に充電所を見つけられるという確信が持てなければ、航続不安は簡単には解消しない可能性があるためだ。
米国のEV市場では今後、充電網の拡充と並行して、高速道路の案内標識の見直しが重要な課題になりそうだ。充電器を増やすだけでなく、道路上で充電網の存在を分かりやすく示し、安心して利用できる環境を整えられるかが、EVの大衆化を左右する新たな変数として浮上している。