米資産運用会社Bitwiseが、従業員の約14%を削減した。暗号資産市場の低迷に加え、ビットコイン現物ETF市場で資金が大手商品に集中するなか、中堅発行体を取り巻く事業環境の厳しさが鮮明になっている。
DecryptやBloombergなどが12日(現地時間)に報じた。従業員数は約180人から155人程度に減少したという。
Bitwiseは米サンフランシスコに本社を置く資産運用会社で、70超の投資商品を手がける。運用資産は約90億ドル(約1350億円)で、このうち約23億ドル(約345億円)がビットコイン現物ETFだ。
ハンター・ホースリー最高経営責任者(CEO)は今回の人員削減について、長期的な成長に向けた調整との認識を示した。暗号資産がより広く経済活動に組み込まれるにつれ、同社の成長も続くとの見方を示している。
ただ、市場環境は厳しい。ビットコイン現物ETF市場の純資産は足元で約775億ドル(約1兆1625億円)に達しているが、資金は一部の大型商品に偏っている。BlackRockのIBITは約473億ドル(約7095億円)、FidelityのFBTCは109億ドル(約1635億円)をそれぞれ集めた。一方、Bitwiseの商品は約23億ドル(約345億円)で、市場全体の3%未満にとどまる。市場拡大の恩恵が中小発行体に広がっていない実態を示している。
ビットコイン価格の下落も逆風となっている。ビットコインは2025年10月に付けた最高値からほぼ半値まで下落し、足元では6万4000ドル前後(約960万円)で推移している。運用会社にとっては、手数料収入の拡大が見込みにくい局面だ。
業界全体ではリストラの動きも続く。Coinbaseは5月に従業員の14%を削減した。ブライアン・アームストロングCEOは当時、市場環境に加え、AIが業務運営の在り方を急速に変えていると説明した。プライムブローカーのFalconXも8月初旬、従業員の約10%を削減し、シンガポール拠点では人員の半数近くを減らした。あわせてシンガポールでのライセンス申請を取り下げ、デリバティブ分野に注力する方針を示した。
事業整理や撤退の動きも出ている。2016年に無期限先物スワップを立ち上げたBitMEXは先月、運営終了計画を公表した。BitMartもその数日後、プラットフォーム運営の整理を決め、自社トークン価格が下落した。
資金フローにも変化が生じている。かつて暗号資産市場を主導した個人投資家の資金は、スポーツベッティングのプラットフォームやAI関連株に向かっている。CoinGeckoの第2四半期レポートによると、予測市場の名目取引量は3カ月で48.7%増の1138億ドル(約1兆7070億円)と過去最高を記録した。一方、中央集権型取引所の上位10社の現物取引量は27.9%減の1兆9500億ドル(約292兆5000億円)となり、暗号資産全体の時価総額も12.6%減少した。
それでもBitwise経営陣は、市場見通しを全面的に引き下げてはいない。マット・ホーガン最高投資責任者(CIO)は今週のBloomberg TVのインタビューで、市場が「冬の終盤」に差しかかっている可能性があると述べた。さらに、1億ドル超(約150億円)が流出した「コールドカード・エクスプロイト」については、むしろETFを通じてビットコインを保有する必要性を強めるとの見方を示した。
今回の人員削減は、単なるコスト削減にとどまらない。ビットコイン現物ETF市場が拡大しても資金は大手商品に集中し、個人マネーは別の高リスク資産へ流れている。暗号資産運用業界で再編圧力が強まっていることを示す動きといえそうだ。