エルサルバドルの事例は、ビットコインを国家の通貨政策に組み込む試みの先例となった。写真=Shutterstock

エルサルバドルでビットコインが法定通貨として採用されてから5年が経過した。導入時に掲げた金融包摂や海外送金コストの削減は限定的にとどまり、政策もその後縮小した。一方で、国家がビットコインを法定通貨として採用した初の事例として、象徴的な意味合いは今なお大きい。

ブロックチェーンメディアのCointelegraphが12日(現地時間)に報じた。ナジブ・ブケレ大統領は2021年6月、ビットコインの法定通貨化を打ち出し、金融サービスへのアクセスが限られていた層の取り込みや、海外送金費用の圧縮を狙いに掲げた。

ただ、その効果は当初の期待を下回った。2025年の研究では、ビットコイン利用者が若年男性、都市部居住者、高学歴層、既存の銀行利用者に偏っていたことが示された。

世界銀行によると、当時のエルサルバドルでは15歳以上人口に占める金融機関口座の保有率は35.9%にとどまっていた。政府提供のビットコインウォレット「Chivo」も、銀行口座を持たない層の金融アクセスを大きく改善するには至らなかった。

海外送金でも、ビットコインの活用は広がらなかった。送金額は国内総生産(GDP)の約24%を占めるが、暗号資産ウォレット経由の送金比率は2020〜2021年に1.7%まで上昇した後、2024年には1%を下回った。

エルサルバドルはもともと米ドルを公式通貨として用いており、ビットコイン導入による為替コストの削減余地も限られていた。

導入時のインセンティブも継続利用には結び付かなかった。政府はChivoの登録者に30ドル相当のビットコインを付与したが、米国国立経済研究所の調査では、初期利用者の60%超が付与分を使った後、追加の取引を行っていなかった。現地店舗でも決済手段としての実利用は低調だった。

政策は最終的に後退した。エルサルバドルは2024年末、国際通貨基金(IMF)と14億ドル規模の金融支援で合意し、ビットコイン関連の国家関与を縮小した。

2025年1月にはビットコイン法を改正し、事業者による受け入れを任意化したほか、納税は米ドル建てに限定した。IMFもその後、ビットコインが銀行未利用層に実質的な利益をもたらした証拠は乏しく、金融包摂への効果も小さいとの見方を示した。

それでも、エルサルバドルの試みが残した象徴性は小さくない。国家レベルでビットコインを法定通貨として採用することが、現実の政策として実行可能であることを示す先例になったためだ。ビットコインインフラ企業JAN3のサムソン・モウは、国家によるビットコイン導入を現実の事例にした点に意義があると指摘した。

この過程で、エルサルバドルは世界のビットコイン支持層にとっての拠点としても存在感を高めた。マックス・カイザーやステイシー・ハーバートらが現地へ移り、ハーバートはその後、国家ビットコイン事務局の責任者を務めた。

5年間の取り組みは、エルサルバドル国内での日常利用という点では期待に届かなかった一方、ビットコインの歴史に国家単位の実験という新たな章を刻んだといえそうだ。

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