Naverの労働組合が、グループ各社ごとに進めてきた賃金・団体協約交渉をグループ横断で一本化する「統合交渉」に乗り出す。背景には、最近施行された労働組合法改正がある。親会社が子会社の労働条件を実質的に左右していると認められる場合、使用者として団体交渉責任を負う可能性があり、Naver本社の関与の度合いが焦点となる。
全国化学繊維食品産業労働組合とイ・ヨンウ共に民主党議員室は12日午前、国会議員会館で「IT業種 統合交渉構造模索のための討論会」を開いた。
討論会では、IT企業グループでは主要な意思決定権限が本社に集中する一方、労使交渉は子会社単位で行われる構造が主な論点となった。こうした実態を踏まえ、企業グループ単位で交渉を進める仕組みが法的・制度的に可能かを議論する目的で開催された。
Naver労組は今回の討論会を皮切りに、20日に「統合交渉キックオフ」イベントを開き、共同交渉の議題を公表する。月内にもNaver側に対し、統合交渉の開始を正式に求める方針だ。
◆子会社ごとの交渉に限界 統合交渉の必要性を提起
統合交渉を打ち出した背景には、Naverグループの運営実態と現行の交渉方式とのずれがある。
Naver支会は2018年の設立当初から、Naver本社だけでなく子会社の労働者も単一の支会として組織してきた。労組によると、2026年8月時点の組合員はNaverを含む28法人で約6200人。このうち、団体協約を締結済み、または交渉中の法人は16社に上る。一方で、賃金交渉や団体協約の締結はこれまで各法人ごとに進められてきた。
オ・セユン支会長は発表で、16法人を対象に年間約150回の交渉が行われ、労使の交渉委員およそ100人が年間1000時間以上を交渉に充てていると説明した。法人は分かれていても、交渉内容はおおむね似通っており、同様の協議が繰り返されているという。
具体例としては、2021年に追加補償制度が子会社全般にほぼ同時期に適用されたケースや、Naver本社で賃金合意案が示された後、子会社でも近い時期に同水準で交渉がまとまるパターンが繰り返されてきた点を挙げた。
労組側は、社屋や勤務方式、福利厚生制度、社内システムに加え、最近の人工知能関連の組織再編に伴う子会社間の人員移動に至るまで、Naver本社の決定や基準が子会社全般に影響を及ぼしていると主張する。
このため労組は、賃金原資や補償体系、勤務制度などグループ共通で決まる事項についてはNaver本社が参加する統合交渉で協議し、各子会社の個別事情は従来通り別途交渉する多層的な交渉構造を求めている。
◆労働組合法改正が追い風 使用者責任は争点ごとに判断
統合交渉の直接の契機となったのは、最近施行された労働組合法改正だ。
改正法では、労働契約を直接結んだ当事者でなくても、労働者の労働条件を実質的かつ具体的に支配・決定できる立場にあれば、労組法上の「使用者」と認められる余地が広がった。企業グループが別法人で構成されていても、親会社が子会社の労働条件に実質的な決定権を行使していたと認定されれば、親会社に直接の交渉責任を問う根拠となり得る。
発表したクォン・オソン延世大学ロースクール教授は、この条項が統合交渉を議論する法的根拠になると説明した。一方で、親会社であることだけを理由に、子会社全体のあらゆる労働条件について使用者責任が自動的かつ包括的に認められるわけではないとも指摘した。
その上で、賃金原資、人事、評価・補償といった個別の議題ごとに、親会社がどの程度の支配・決定権を行使しているのかを見極め、その範囲に応じて交渉責任を判断すべきだとした。統合交渉が実現しても、全子会社の賃金や労働条件を一律に決める仕組みとは異なるという。
今後は、グループ共通で扱う議題と、個別法人が独自に決定できる議題をどう切り分けるかが、交渉構造を設計する上での最大の論点になりそうだ。
討論では、こうした枠組みを運用する際の課題も取り上げられた。キム・テウク公共運輸労組法律院弁護士は、親会社が実質的な支配力を持つ議題と、子会社が独自に決定権を持つ議題を分けて交渉する過程で、交渉を代表する労組の特定、親会社の使用者性の立証、争議手続きの進め方などが複雑化する可能性があると指摘した。
一方、パク・ミョンジュン韓国労働研究院主席研究委員は、統合交渉には使用者側にも利点があるとの見方を示した。法人ごとに繰り返される交渉や調整の手続きを減らせるほか、子会社に共通して適用する原則をあらかじめ整備しやすくなるという。
◆Naver Zの賃金対立も影 経営の独立性との両立が課題
統合交渉を巡る議論が始まる中、一部子会社では賃金交渉を巡る労使対立も続いている。
メタバースプラットフォーム「ZEPETO」の運営会社であるNaver Zの労組は、最近実施した争議行為の賛否投票で98%の賛成を得て、争議権を確保した。Naver本社は今年の賃金を5.3%引き上げることで合意した一方、Naver Z側は経営状況を理由に据え置きを提示しており、労組は本社と同水準の引き上げを求めている。実際にストライキを実施するかどうかや、その方式はまだ決まっていない。
この事例は、統合交渉を巡る今後の争点も映し出している。労組は、子会社に共通して適用される労働条件はグループとして交渉すべきだと主張する一方、子会社ごとに事業段階や業績、財務状況が異なる以上、個別法人の経営上の独立性をどこまで認めるかという別の論点も残る。
統合交渉が実現した場合の焦点は、Naverが各子会社の労働条件にどこまで実質的な決定権を持っていると認められるかにある。グループ共通の議題と法人別の議題を分ける基準に加え、子会社ごとの経営成果とグループ内の処遇の公平性をどう両立させるかも重要な論点となる。
別法人を前提とする既存の経営体制と、グループ単位の交渉構造をどう併存させるかが、統合交渉の定着を左右しそうだ。