米国と中国の技術・通商摩擦が、人工知能(AI)からロボット機器、通信部品、ドローンへと広がっている。9月に予定される習近平国家主席とドナルド・トランプ大統領の首脳会談を前に、双方は規制強化と対抗措置を相次いで打ち出している。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が5日、現地時間で報じた。ここ数カ月、両国の対立は大規模AIモデルを巡る論争にとどまらず、輸入制限やブラックリストの拡大、輸出管理の強化にまで及んでいる。
足元の焦点となっているのは、中国のAIモデルだ。北京のスタートアップMoonshot AIは7月中旬、2兆8000億パラメータのオープンウェイト大規模言語モデル「Kimi K3」を公開した。
これに対し、米ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のマイケル・クラチオス局長は、Moonshot AIがAnthropicの「Claude Fable」を複製するため、蒸留手法を用いたと主張した。
スコット・ベセント米財務長官も、中国企業が「産業規模の蒸留攻撃」によって知的財産権侵害の一線を越えた場合、制裁や輸出管理対象リストへの追加に直面し得ると警告した。
中国側はただちに反発した。中国商務部は米国の主張を「典型的なAI覇権主義」と批判し、自国の合法的な権益を守るため「あらゆる必要な措置」を講じると表明した。
共産党系理論誌「求是」も、米国の対応は技術を名目にした覇権行為だとして非難している。
米国の規制対象は、AI以外の産業機器にも広がっている。米連邦通信委員会(FCC)は先週、外国製機器を対象とするカバードリストを拡大し、先端ロボット機器と電力網に接続するインバーターを新たに加えた。
新たな措置では、対象となる新規のロボット機器と電力インバーターの輸入・販売を禁じる一方、すでに導入済みの機器は適用対象外とした。
FCCは、先端ロボットがデータや物理的動作を悪用する攻撃の足掛かりになり得るほか、インバーターが米国の電力網の脆弱性を高める恐れがあるとみている。
これに対し中国外務省は、米国が国家安全保障の概念を過度に拡大し、中国企業を不当に抑え込んでいると反発した。保護主義は米国の競争力向上にはつながらず、米企業と消費者の利益を損なうだけだと主張している。
高官レベルの協議は続いているが、溝は埋まっていない。何立峰副首相は7月31日、スコット・ベセント財務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表部(USTR)代表とオンラインで協議し、最近の対中経済・貿易制限措置に深刻な懸念を伝えた。
一方のベセント氏は、中国に対し、レアアースと米国産農産物に関する約束を完全に履行するよう求めたと明らかにした。
制裁の対象はサプライチェーン全体にも広がっている。米国土安全保障省は、ウイグル強制労働防止法に基づき、中国企業43社を追加指定した。対象分野は食品、綿花、医薬品、金属、リチウム生産に及ぶ。
同法は2021年に米議会を通過し、新疆ウイグル自治区に関連する強制労働生産品の米国市場への流入防止を柱としている。
中国商務部は2日、新疆地域における強制労働疑惑を否定したうえで、米国の措置は経済的威圧に当たると批判した。関連企業の正当な権益と、世界の産業・サプライチェーンの安定を著しく損なうとも主張した。
対立は、データセンターの中核部品に広がる可能性もある。ロイターは3日、FCCが中国製光トランシーバの輸入禁止に向けた準備を進めていると報じた。
光トランシーバは、データセンターで光ファイバーを通じたデータ伝送に使われる部品だ。米当局は、データ窃取やマルウェア拡散に加え、AIモデルを稼働させるデータセンターの運用妨害に悪用される可能性を懸念している。年内の措置公表と施行を目指しているという。
中国も対抗措置を打ち出した。中国商務部は4日、米国向けドローンと主要部品、関連技術の輸出について、即時に案件ごとの審査方式へ切り替えた。理由として、国家安全保障と不拡散義務を挙げている。
あわせて、米企業6社を中国の対抗制裁リストに追加し、中国企業・個人との取引や協力を禁じた。
さらに、中国の主権を損なう措置の導入をFCCとともに支援したとして、別の1社もブラックリストに加えた。
米中の対立は、AIモデルの著作権を巡る攻防を起点に、ロボット機器、電力インバーター、光トランシーバ、ドローン、さらには原材料や農産物の履行問題へと拡大している。首脳会談を前に高官級対話は維持されているものの、技術規制とサプライチェーン制裁が並行して進む構図は当面続きそうだ。