Kakaoは、AIデータセンターやGPUクラウドといったインフラ事業への本格参入は見送り、KakaoTalk上で利用者の意図をくみ取り、注文・予約・決済まで完結させるエージェントAIに経営資源を集中する。まずはフードデリバリーで実用化を進め、その後はコマース、予約、旅行、決済へと適用領域を広げ、AIを「トックビズ」の新たな成長ドライバーに育てる考えだ。
キョン・シナ代表は6日開催の2026年4〜6月期決算説明会で、「AIはトックビズの成長再加速の中核であり、今後の主要収益源として定着させる」と述べ、AI事業の方向性を示した。
Kakaoは年末までに、KakaoTalk内のAIサービスに接触する月間利用者を1000万人規模へ拡大する方針だ。収益化は2027年から本格化させ、取引手数料とサブスクリプションを柱に据える。AI広告の収益化が本格化する2028年には、トックビズ売上に占めるAI関連売上の比率を2桁へ引き上げる目標を掲げた。
同日発表した2026年4〜6月期の連結売上高は前年同期比9%増の2兆985億ウォン、営業利益は36%増の2770億ウォンで、ともに四半期ベースで過去最高を更新した。プラットフォーム部門の売上高も17%増となり、同社はAI投資を継続するための財務基盤を確保したとしている。
◆Coupang Eatsと連携、まずデリバリーで実証
Kakaoは、AI時代の利用体験について、従来のように画面上のメニューやボタンを探して操作するのではなく、テキストや音声で依頼すれば、エージェントが必要なサービスを呼び出して結果を返す形へ移行するとみている。その最初の外部連携先として選んだのがフードデリバリーだ。
同社はCoupang Eatsと連携し、KakaoTalkの会話の流れの中で注文意図を把握する仕組みを準備している。利用者の嗜好に応じてメニューを提案し、注文から決済までをチャットルーム内で完結させる構想だ。
フードデリバリーは利用頻度が高く、情報比較よりも迅速な注文・決済が重視される分野であることから、エージェントAIの有用性を検証しやすいと判断した。
当初計画より提供が遅れているとの指摘に対しては、単なるAPI接続にとどまらず、認証から注文、決済までを一連の導線として完結させる設計を目指したためと説明した。
その過程では、提携先とサービス構造や利用者体験を見直すだけでなく、取引プロセスにおける両社の役割と責任、事業モデル、運用基準を擦り合わせる必要があったという。
Kakaoは今回の連携を通じ、まず注文・決済への転換率や、提携先の取引額が実際に増えるかを見極める。そのうえで、認証、権限委譲、注文・決済など反復利用が見込まれる機能をSDKやエージェントビルダーとして提供し、後続パートナーの開発負担を下げる方針だ。
対象領域は今後、コマース、予約、旅行、決済へ順次拡大する。あわせて、3400件超のMCPツールが稼働し、1日10万回超呼び出されているオープンプラットフォーム「Play MCP」も、エコシステム拡大に活用する。
◆先行して利用習慣を形成、収益化は来年本格化
Kakaoは収益化に先立ち、利用者にKakaoTalk内でAIを繰り返し使ってもらうことを優先する。Kanana in KakaoTalkは平均2週間ごとに改善を重ねているという。
同社によれば、AI側から先に話しかける「先トーク」機能の反応率は80%超、AI回答に対する肯定的評価の比率は90%超に達した。リテンションも、2026年1〜3月期の70%台から足元では80%近くまで改善したとしている。
「ChatGPT for Kakao」の累計加入者数は約1300万人。1人当たりの1日平均送信メッセージ数は6件を上回った。Kakaoは、チャットルーム内でChatGPTを呼び出し、その回答を共有できる機能に加え、PC対応も追加して接点拡大を進めた。
下期にはKanana in KakaoTalkでエージェントAIの体験を本格展開する。ChatGPT for Kakaoについては、画像生成機能やチャットボット機能の高度化を進める計画だ。
こうした利用者基盤を踏まえ、2027年からは取引手数料とサブスクリプションを中心に収益化を本格化する。中長期的には、会話を通じて把握した利用者の意図を活用するAI広告を加え、ディスプレイ広告中心の事業構造を検索広告領域まで広げる戦略も打ち出した。
シン・ジョンファンCFOは、既存の広告・コマース事業の成長がAI投資負担を相殺し始めていると説明した。足元の成長により、AI収益が立ち上がるまでの投資を吸収できる水準に近づいているという。
4〜6月期のトックビズ広告・サブスクリプション売上高は前年同期比14%増の3999億ウォンだった。このうちBizboardを除くディスプレイ広告売上は前年同期の3倍となり、ディスプレイ広告全体の45%を占めた。
◆AIインフラには踏み込まず、B2Cに集中
一方でKakaoは、AIデータセンターやGPUクラウドなどのインフラ事業には本格参入しない方針を明確にした。キョン代表は「AIバリューチェーン全般の事業性は十分検討した」としたうえで、「Kakaoが最も高い競争力を発揮できるのはインフラレイヤーではないと判断した」と述べた。
同氏は、利用者の日常に入り込むB2Cサービスを築いてきたことがKakaoの成功要因であり、AI時代でもこの強みに集中する方が成長可能性は高いと説明した。
判断材料には財務負担もある。キョン代表は、GPUやAIサーバーなどハードウェア設備の世代交代が非常に速く、競争的な供給拡大も続いていると指摘。足元の需給逼迫で生じている高収益が長期的に続く保証は乏しいとの見方を示した。
そのうえで、長期にわたり負担すべき投資額に比べ、期待できる投資収益率(ROI)は十分高くないと説明した。設備投資規模が競争力を左右しやすいインフラよりも、人々が日常的かつ習慣的に使うAIサービスを生み出すモデル・サービスレイヤーに集中する方針を示した。
Kakaoは、こうした選択と集中の効果が4〜6月期業績にも表れていると説明した。トックビズの売上成長率は4年ぶりに2桁へ回復し、Kakao単体の営業利益率はKakaoBrain編入後で最高となる18%を記録した。
シンCFOは下期の見通しについて、年初に示した通期売上高10%以上成長、営業利益率10%の目標を「無理なく上回る」と表明した。中長期では、既存の広告・コマース成長にAI収益の寄与が加わることで、Kakao単体の営業利益率は20%を大きく上回るとの見通しを示した。
今後の焦点は、デリバリー分野での最初の連携が実際の注文・決済転換や提携先の取引額増加につながるかどうかだ。その成果をコマース、予約、旅行などへ横展開できるかが、KakaoTalkにおけるAI利用習慣の定着と収益化の成否を左右しそうだ。