XRP Ledger(XRPL)は5日、マルチシグ取引の署名調整をオンチェーンで完結させる仕組み「On-Chain Cosigner」を提案した。採用されれば、外部通信や中央の調整役を介さずに承認手続きを進められるようになり、企業や機関での分散承認ワークフローの効率化につながる可能性がある。
この提案は、XRPL Standardsのリポジトリに提出された。現在のXRPLでもマルチシグ取引自体は利用できるが、実際の運用では取引を事前に作成し、各署名者に配布したうえで、メールなどのオフチェーンの手段で署名を集める必要がある。
今回の提案が採択されれば、署名者はこうした外部通信に頼らず、XRPL上で直接承認を進められるようになる。マルチシグ運用に伴う調整プロセスをチェーン上に取り込み、より分散的な形に改めるのが狙いだ。
提案書はション・シエ、ズユアン・ワン、チェンナ・ケシャバ・B・S、マユカ・バダリの4氏が作成した。XRPLコミュニティのVetは現行方式について、「多くのチェーンや現在のXRPLでは、複数の署名者がオフチェーン、あるいはスマートコントラクトを通じて署名の調整・収集を行う必要がある」と指摘。そのうえで、今回の提案はオンチェーンでマルチシグの調整を完結できる機能を基本レイヤーに組み込み、完全分散型の方式を目指すものだと説明している。
現行方式では、調整役が各署名を集約する工程が必要になる。このため、提案書が指摘する「ラストマイル」の問題が生じやすい。例えば、調整役が集めた署名を失ったり、オフラインになったりした場合、署名手続きそのものが成立しなくなる可能性がある。
新たな仕組みでは、まず参加者がXRPL上に「TransactionProposal」オブジェクトを作成する。ここには改変できない取引データがオンチェーンで保持される。続いて提出された各署名はその場で検証され、承認情報として順次追加される。必要な署名がそろえば、誰でも完成した取引を通常の手続きで提出でき、追加の再構成は不要になる。
提案は特に企業・機関の利用を意識している。提案書では、この機能がバッチ取引のXLS-56、手数料・準備金のスポンサー機能、将来の融資プロトコル運用とも相互補完的に動作するよう設計したと説明している。機関カストディや企業向け決済など、承認権限が複数の主体に分散する環境での利便性向上を見込む。
今後の焦点は、提案が実際に改訂プロセスを通過するかどうかだ。今回の提案は新たにマルチシグ機能そのものを追加するものではなく、承認調整の仕組みを見直す点に意義がある。オフチェーン通信や中央の調整役への依存を減らせれば、XRPLの機関向けワークフローの簡素化につながりそうだ。