ウォール街の主要金融機関が、Anthropicのテキサス州におけるAIデータセンター計画向けに組成する150億ドル(約2兆2500億円)の融資について、実行後に債券市場へ売却する案を検討していることが分かった。AIインフラ向けの大型案件に関与しながら、関連与信を長期にわたり自社のバランスシートに抱え込むリスクを抑える狙いがある。
Cryptopolitanが5日(現地時間)に報じた。Morgan Stanleyなどで構成する融資団は、融資実行後、速やかに債券市場で売却する選択肢を検討しているという。
計画地はテキサス州ハバードのデータセンターキャンパスで、敷地面積は2000エーカー(約245万坪)。Anthropicが賃借する形で進められる。銀行側は、成長が続くAIインフラ需要を取り込みたい一方、関連融資の長期保有には慎重姿勢を強めている。
データセンター開発は、初期投資が数十億ドル規模に上るうえ、建設期間も長い。長期的な需要見通しがAI企業の業績に左右されやすい点も、与信判断の重荷となる。債券市場での売却は、銀行が資本効率を高めながら、特定の高リスク分野へのエクスポージャーを抑える手段となる。
AI向け資金需要の急増で、インフラ金融市場はすでに逼迫している。建設費やエネルギー関連コストが数十億ドル単位で膨らんでいるためだ。Googleはこの案件に向け、ハードウエア生産からデータセンター建設まで、総額1500億ドル(約22兆5000億円)超の資金手当てと契約の枠組みを整えたとされる。
資金調達の枠組みでは、施設本体の建設資金を銀行団による主たる融資で賄い、Google向けのカスタムTPUチップは別建てで資金を調達する。取引にはBroadcom、Apollo、Blackstone、Morgan Stanleyが参加する。
Broadcomは、Anthropicの事業が不調となりチップ価値が下落した場合の損失を補填する役割を担う。ApolloとBlackstoneは、特別目的会社を通じて設備をAnthropicにリースするためのプライベートクレジットを供給する。Morgan Stanleyは財務アドバイザーと融資の両面を担う。
Googleはこの仕組みについて、「各社がそれぞれのバランスシートを活用する構造だ」と説明。「Googleはデータセンター、Broadcomはチップを担う」としている。この枠組みの下でも、Googleはハバードのキャンパス持ち分の約20%を保有する見通しだ。
Googleは、送電網接続の遅れを回避し、エネルギーコストを抑えるため、敷地内で天然ガス発電所を稼働させる計画という。一方、テキサス州ではデータセンター建設が相次いでおり、送電網容量の逼迫や水不足、電力料金の急騰への懸念が強まっている。
データセンターと電力資産を一体で組み込む案件では、融資団は2種類のリスクを同時に見極める必要がある。Metaの類似案件「Project Walleye」では、こうした複合的な資産リスクを理由に、融資団がより高い利回りを求めたと伝えられている。
今回のテキサス案件では、150億ドルの債務を複数回の債券発行に分け、建設の進捗に応じて資金を引き出す見通しだ。開発会社のNexus Data Centerが建設マイルストーンを達成するごとに、必要資金を順次調達する方式となる。資金の一部をレバレッジド・ローンに振り替える可能性も指摘されている。
一方で、Googleによる信用補完が本格的に機能するのはデータセンター完成後になる可能性があり、発行債券が投機的格付けとなるとの見方もある。投資家は工事遅延や予算超過のリスクも負うことになる。
ただ、GoogleとAnthropicが案件の背後にいる点は、投資需要を下支えする材料とみられている。インフラ連動型資産は投資適格債より高い利回りが期待でき、資金流入の動きも出ている。ただし、Googleの保証が実際に効力を持つまでの間は、建設リスクとスケジュールの不確実性が価格に織り込まれる公算が大きい。
足元の債券市場は、AIプロジェクト向けの長期資金を、銀行融資よりも迅速かつ低コストで調達する受け皿として存在感を高めている。銀行側はここ数カ月、Oracle関連のインフラ融資500億ドル(約7兆5000億円)についても、リスク移転市場を活用して残高圧縮を進めてきたと報じられている。
市場関係者は、今回のテキサス案件の成否が、今後のAIインフラ案件の資金調達手法に影響を与えるとみている。投資家が大幅な利回り上乗せなしにこの債券を無理なく吸収できれば、他のテック企業でも数十億ドル規模のデータセンター開発で同様のスキームが広がる可能性がある。逆に需要が弱い、あるいはクレジットスプレッドが一段と拡大すれば、AIインフラの調達コストは上昇し、銀行の関与のあり方も変わる可能性がある。