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ビットコインを巡る当面のセキュリティリスクは、量子計算機による暗号解読よりも、ウォレットやファームウェア、復旧機能といった周辺運用にある――。こうした見方が強まっている。

米ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが4日付で報じたところによると、人工知能(AI)は秘密鍵そのものではなく、それを取り巻くソフトウェアやハードウェアの弱点をより速く見つける可能性がある。こうした観点から、コールドストレージの安全性を改めて点検すべきだとの指摘が出ている。

具体例として挙げられるのが、CoinKiteが7月30日に公開した技術資料だ。同社によると、2021年のソフトウェア変更以降、一部ウォレットではシード生成時にハードウェア乱数生成ではなく、MicroPythonベースのソフトウェア方式が使われていた。

その後、対象モデルにはセキュリティチップで生成した乱数を一部追加したが、新しいファームウェアを導入しても、すでに作成済みのシードまで保護されるわけではない。ダイス入力など別の乱数生成方式を使っていない場合は、既存のシードを作り直し、資金も新しいウォレットへ移す必要があるという。

この事例は、コールドウォレットであっても、サプライチェーンやビルド、ファームウェア検証だけで安全性を保証できるわけではないことを示している。

署名プロセスにもリスクは残る。2023年12月14日には、フランスのハードウェアウォレット企業Ledgerのソフトウェアツール「Connect Kit」で、悪意あるコードを含むパッケージが流通し、利用者が資産流出につながる取引に署名するよう誘導される事案が発生した。

Ledgerは当時、同社の中核インフラやコードリポジトリ、連携する分散型アプリケーションそのものは侵害されていないと説明した。一方で、悪性ソフトウェアがハードウェアウォレットで最終承認を行う直前の段階まで到達し得ることが明らかになった。

インターネットから完全に切り離して使う「エアギャップ」方式にも限界がある。機器をネットワークから遮断していても、署名済みの取引データは最終的に外部へ送信しなければならないためだ。

研究者は「Dark Skippy」と呼ばれる手法を使い、通常のビットコイン取引署名2件の中にウォレットのシード情報を埋め込めることを実証した。見た目は正常な署名でも、内部に埋め込まれた情報を通じてシードが漏えいする可能性があることを意味する。

ハードウェア自体を狙ったリスクも確認されている。Ledgerのセキュリティ研究組織「Ledger Donjon」は7月9日に公開した研究で、レーザー故障注入により、Tangemウォレットのファームウェアにある復旧状態の確認手順を回避できると明らかにした。

もっとも、この攻撃には実機の入手に加え、高度な専門知識と約25万ドル(約3750万円)相当の装置が必要で、一般的な攻撃に直結する可能性は低いとみられる。それでも、セキュリティチップが安全でもウォレット全体の安全性が保証されるわけではなく、ファームウェアの挙動まで含めた検証が必要であることを示した。

復旧機能も、利便性の裏側で新たな依存関係を生む。Ledger Recoverは、利用者の申請に応じて、暗号化したシード断片を複数のバックアップ事業者に分散保管する仕組みだ。

この場合、本人確認や復旧申請の処理、新端末での復元プロセスに外部事業者が関与する。秘密鍵をオフラインで保管するだけでは、コールドストレージを巡るリスク全体を説明しきれないというわけだ。

こうした脆弱性の発見をさらに加速させる要因として、AIも注目されている。OpenAIは7月21日、社内ベンチマークの結果として、サイバー関連の拒否設定を弱めたモデルが、研究環境とHugging Faceの運用インフラ全体で複数の脆弱性を発見し、それらを連鎖的に結び付けたと明らかにした。

ただし、現時点では初期段階にあり、追加調査と外部評価が進んでいるという。

Hugging Faceも7月16日、運用環境への侵害事実と影響評価の進捗を公表した。攻撃対象はソフトウェアインフラであり、ビットコインウォレットや暗号技術そのものではなかった。

それでも、AIが異なる脆弱性を組み合わせ、攻撃経路を構成し得る点は注目を集めている。

暗号資産に近い領域でも同様の動きがある。6月17日に公開された「Cerberus」は、複数のAIエージェントとセキュリティ専門家が協働し、ウォレットや決済ソフトの脆弱性を探索するセキュリティ点検システムだ。

自律的にシードを復元する技術とは別物だが、AIがウォレットソフトの欠陥発見を加速し得る例として紹介されている。

CoinKiteは今回の公開にあたり、AIが脆弱性の発見を早める可能性には触れつつも、あくまで仮説の域を出ないと説明した。同社もAIを使った補助レビューを実施したが、今回のバグは見つけられなかったとしている。

現時点で、AIがすべての欠陥を見つけられると断定するのは難しい。ただ、コーディングミスの発生から実際の脆弱性発見までの時間差を縮める可能性は高まっている。

結局の焦点は、ビットコインの暗号体系そのものが崩れるかどうかではない。シード生成から保管、復旧に至るまで、人間が設計したカストディの仕組みをどこまで迅速に点検し、改善できるかにある。

ビットコインの暗号学的基盤はなお維持されている一方で、現実の圧力はすでに人が設計したカストディ機器や運用手順に向かっている。コールドストレージの強みも、どの層を信頼するのか、問題発生時に資産をどう移し、どう復旧するのかという備えがあってこそ成り立つ。

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