Tencentは8月5日、次世代AIモデル「Hy3(Hunyuan 3.0)」の海外展開を本格化し、海外の開発者や企業向けに無償提供を始めた。大規模言語モデル(LLM)の提供にとどまらず、業務向けAIエージェントやデザイン制作基盤にも組み込み、生産性AI分野での競争力強化を目指す。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、Tencentは業務向けAIエージェント基盤「WorkBuddy」、デザイン制作ツール「Tencent Design Meora」、モデル基盤「TokenHub」を通じて、Hy3を海外の開発者、企業、一般ユーザー向けに公開した。
今回の措置は、同社がHy3を正式リリースした後の追加展開に当たる。TencentはWorkBuddyで世界のユーザーを対象に、8月31日までHy3を無料で提供する。
狙いは、海外の開発者や企業の初期ユーザーを取り込み、グローバルAIエコシステムでの存在感を高めることにある。
Tencentは、Hy3の差別化要因としてAIエージェント機能を前面に打ち出す。Tencent Cloudで上級副社長兼国際事業責任者を務めるポーシュ・ヨン氏は、「Hy3は、企業がAIの実証段階を超え、実用的で信頼性が高く、拡張可能な形で活用できるよう支援する」とコメントした。
モデル性能そのものの競争よりも、実務で使える生産性向上ツールとしての実装を重視する姿勢を示した形だ。
Hy3は2950億パラメーター規模のモデル。Tencentは、モデルサイズ自体は競合を上回らないものの、現時点で自社開発AIとして最高水準の性能を実現したとしている。
業界では今回の発表を、TencentのAI組織再編後の最初の成果として受け止める見方も出ている。OpenAI出身の研究者ヤオ・スンウェイ氏が昨年末にTencentへ加わり、基盤モデル開発を統括して以降、初の大規模なAIアップデートとなるためだ。
利用指標も伸びている。Tencentによると、Hy3のAPI呼び出し数は前世代比で68倍超に増加した。リリース初週には、OpenRouterのグローバルLLM利用ランキングで首位を記録したという。
一方、8月5日時点のOpenRouterランキングでは、DeepSeek V4 Flash、XiaomiのMiMo-V2.5に次ぐ3位だった。
Tencentの動きは、中国AI企業の競争激化とも重なる。中国の生成AI市場では、Alibaba、ByteDance、DeepSeek、Zhipu AIなどが競争を繰り広げており、TencentはHy3を軸にAIエージェントのエコシステム拡大を進めている。
市場調査会社アナリシスによると、Tencentの業務向けAIプラットフォームWorkBuddyは、6月時点で約2100万人のユーザーを抱え、デスクトップ型AIエージェントで最多の利用者数を記録した。ByteDanceのTrae IDEやAlibabaのCoderWorkを上回る水準だという。
TencentのAIモデルは2023年に「Hunyuan」として初公開され、その後Hyシリーズへ発展した。ここ1年は、Zhipu AIのGLMやMoonshot AIのKimiといった競合モデルに比べ、性能面で見劣りするとの評価もあった。このため同社はAI組織を再編し、研究開発体制を全面的に見直してきた。
ヤオ氏は6月、Hy3の開発に向けて事前学習と強化学習のインフラを新たに整備し、データセットとモデル評価体系も全面的に改善したと説明している。
業界では、今回の海外展開が単なるサービス投入にとどまらず、再編後のTencentのAI戦略を占う試金石になるとの見方が出ている。Hy3が海外市場でどの程度のスピードでユーザー基盤を広げられるかが、中国国内に加え、グローバルの生成AI競争におけるTencentの立ち位置を左右しそうだ。