米証券取引委員会(SEC)のヘスター・ピアース委員は、暗号資産市場の制度整備を巡り、Clarity法案の成立に前向きな見方を示した。成立すれば、暗号資産の現物市場を監督する当局間の権限分担が明確になるとの認識も示した。
Bitcoin Magazineが8月4日(現地時間)に報じたところによると、ピアース委員は、法案成立によって業界、投資家、規制当局のいずれにとっても、より明確な判断基準が示されるとの見方を示した。
同委員はCoinDeskの番組「The Policy Protocol」に出演し、法制化の必要性を強調した。「私は今でもこの法案は成立すると見ている。暗号資産の現物市場について、誰が権限を持つのかという線引きが明確になる」と語った。
そのうえで、仮に法案が成立しなかった場合でも、暗号資産を活用した資金調達の枠組みを整備することは可能だと付け加えた。
Clarity法案は、米暗号資産市場全体を対象とする規制の枠組み整備を柱とする。業界が長年求めてきた市場構造法案だが、2026年に入っても審議は停滞していた。
停滞の背景には、銀行業界のロビー団体の反発があるとされる。暗号資産企業が顧客に対し、ステーブルコインを通じた収益機会を提供できるようになる点を懸念しているためだ。
法案は7月に修正案が再提出され、一部の論点が見直された。修正案には倫理関連の条項が盛り込まれ、政府高官とその家族による暗号資産の発行や宣伝を禁じる内容が含まれた。
一方で、民主党の一部はなお追加修正が必要だとの立場を維持している。
ピアース委員は、法案成立後も関連ルールの整備は続くとの見通しを示した。「法案が成立すれば、私たちが進めるべきルール整備は数多くある」と述べた。
ただ、法案成立が遅れたとしても、SECが何もしていないわけではないとも強調した。
今回の発言は、米国の暗号資産規制を巡る方針転換とも重なる。ピアース委員はSEC内で比較的業界寄りの立場を取ってきた人物で、市場では「クリプト・マム」の異名でも知られる。
これに対し、ゲーリー・ゲンスラー前SEC委員長の在任中、SECはデジタル資産業界に対して強硬姿勢を取り、複数の暗号資産企業を提訴した。
その後、2025年のドナルド・トランプ米大統領就任を機に、SECを含む米規制当局は暗号資産の立法化や制度整備により前向きな方向へかじを切った。SECは同年、暗号資産政策を担うタスクフォースも発足させている。
こうした流れの中で、Clarity法案の行方は、米暗号資産市場における規制権限の配分や制度整備の進み方を左右する焦点となっている。成立すれば、現物市場の監督を巡る当局間の線引きは一段と明確になる見通しだ。
一方で、成立が遅れた場合でも、SECが暗号資産を活用した資金調達に関する別個のルール整備を進める可能性があるとの見方も出ている。