米暗号資産規制は、業界に前向きな姿勢だけでなく、制度設計を担う人材と立法日程にも大きく左右されることを示した(写真=Shutterstock)

米国の暗号資産市場構造法案「クラリティ法」を巡り、2026年内の成立期待が大きく後退している。政策の中核を担ってきた政府・議会関係者の退任が相次ぐ一方、上院本会議での採決やフィリバスター阻止に必要な60票の確保といった手続きが残っているためだ。Polymarketでは、同法案が2026年内に成立する確率が7月29日時点で27%まで低下した。

4日、CryptoSlateによると、成立確率は2月の82%をピークに低下基調が続き、7月中旬には32%、7月29日には27%まで落ち込んだ。

背景には、米政府と議会で暗号資産政策を担ってきた主要人物の相次ぐ退任がある。スコット・ベッセント財務長官のブロックチェーン・デジタル資産政策担当の首席補佐官だったタイラー・ウィリアムズ氏は7月31日に退任し、民間に戻った。

ウィリアムズ氏は財務省で、ステーブルコインの実装、銀行向けガイダンス、不正資金対策規制の調整を担ってきたとされる。

これに先立ち、ハリー・ジョン氏は7月20日、ホワイトハウスの暗号資産委員会を2週間以内に離れると公表した。米証券取引委員会(SEC)でヘスター・ピアース氏が率いる暗号資産タスクフォースも年内に体制変更が見込まれており、ピアース氏は年末に退く計画だ。

上院銀行委員会のデジタル資産小委員長を務めるシンシア・ルミス氏も、2027年1月の任期満了に合わせて上院を離れる意向をすでに示している。

4人はいずれも、それぞれの立場から米国の暗号資産規制の枠組みづくりを進めてきた。ウィリアムズ氏は財務省側の実務調整を担い、ジョン氏はホワイトハウス、議会、各機関の橋渡し役を果たしてきた。

また、ピアース氏のタスクフォースはSEC内部でトークン分類や登録制度のたたき台を扱い、ルミス氏は市場構造法案の策定や上院委員会通過に向けた交渉に関与してきた。

問題は、こうした制度設計がなお法制化の途上にあることだ。クラリティ法案は上院銀行委員会を15対9で通過したが、なお上院本会議での採決と、フィリバスター阻止に必要な60票の確保を残している。

下院はすでに2025年7月、独自法案H.R. 3633を294対134で可決した。ただ、倫理条項を巡る論争に加え、銀行業界の反対や中間選挙を控えた上院日程が、最終的な立法の障害として残っている。

クラリティ法案の柱は、SECと米商品先物取引委員会(CFTC)の権限の境界を明確にすることにある。成立すれば、デジタル商品(デジタルコモディティ)の現物市場はCFTCが所管し、有価証券や投資契約性を持つ資産はSECが引き続き監督する。

この線引きは、取引所が特定のトークンを上場できるかどうか、プロジェクトが投資家にどのような情報開示を行うべきか、さらにプラットフォームで問題が起きた際にどの規制当局が責任を負うのかを左右する。

上院案には、デジタル商品取引所、ブローカー、ディーラーの登録規則も盛り込まれている。対象は、情報開示、利益相反、財務健全性、サイバーセキュリティ、顧客資産保護などだ。

法制化されなければ、プラットフォーム各社は議会立法ではなく、当局の解釈や執行方針、州政府の規則変更に応じて、上場やカストディー、商品性の判断を続けざるを得ない。

もっとも、ワシントンの業界に前向きな姿勢が直ちに後退したわけではない。ポール・アトキンス氏がSEC委員長を務め、マーク・ウエダ氏も委員として残っている。

ホワイトハウス暗号資産委員会のパトリック・ウィット事務局長は、クラリティ法の交渉に当たるため軍事訓練も延期して職務にとどまったと明らかにした。上院銀行委員長のティム・スコット氏やビル・ハガティ氏らも、法案処理を引き続き後押ししている。

政治日程の外でも、業界の資金投入は続いている。暗号資産業界の利害関係者は2026年の中間選挙サイクルに約2億ドル(約300億円)を投じた。2024年の約1億7000万ドル(約255億円)を上回る規模だ。

それでも、賭け市場は政治の計算より慎重な見方を崩していない。成立確率は2月の82%から7月中旬に32%、7月29日には27%へと低下した。

今後の焦点は、上院が休会前の残り期間で倫理条項を巡る論点や銀行業界の反対を整理できるかどうかにある。交渉が妥結すれば、後任はすでに整えられた法案の枠組みを引き継ぎ、ステーブルコイン規制を定めたGENIUS法のように、市場構造規制でも継続性を確保できるとの見方がある。

一方で、上院日程の遅れと人事の空白が重なれば、投資家が必要とする分類・登録・開示ルールは、法律ではなく当局のメモや執行判断に依存し続けることになる。

結局のところ、米国の暗号資産規制は方向性そのものより、いつ制度として完成するのかという不確実性の方が大きい。規制体系づくりを担ってきたキーパーソンが相次いで退く中、議会がクラリティ法をいつ恒久ルールとして成立させるのかが、市場の次の焦点になっている。

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