ゲーム業界で、新作より既存タイトルを掘り起こす「クラシック回帰」が強まっている。新作の投入本数は増えている一方、売上やプレイ時間は旧作に集中する傾向が鮮明になっており、各社は実績ある知的財産(IP)のクラシック版投入を加速させている。
◆新作は増加、売上は旧作に偏重
この傾向は、世界最大のPCゲームプラットフォーム「Steam」で特に際立つ。市場調査会社Alinea Analyticsによると、Steamの2026年上半期売上高は111億ドル(約1兆6650億円)と、前年同期の97億ドル(約1兆4550億円)から14.5%増え、上半期として過去最高を更新した。
ただ、年内発売の新作が占める売上比率は21%にとどまった。2024年の29%、2025年の27%から2年連続で低下しており、市場全体は拡大しているものの、その恩恵は既存タイトルにより集まっている構図だ。
背景には新作本数の急増がある。2025年にSteamで発売された新作は2万1394本で、生成AIの普及前だった2021年の1万1223本からほぼ倍増した。ゲームエンジンや流通プラットフォームの利用環境が整い、生成AIの活用がコーディングや音楽、翻訳などに広がったことで、小規模開発チームでも開発を進めやすくなったためだ。
一方で、増えた新作が実際の利用につながっていない点も浮き彫りになっている。2025年12月中旬時点では、Steamに投入されたゲーム1万9112本のうち48.8%(9327本)はユーザー評価が10件未満、11.7%(2229本)は評価ゼロだった。2025年の年間総プレイ時間に占める同年発売作の比率も14%にとどまった。
韓国のPCバン市場でも状況は似ている。GameTricsによると、3日時点のPCバンシェア上位には、「League of Legends」「VALORANT」「PUBG: BATTLEGROUNDS」「FC Online」「Sudden Attack」「MapleStory」「Overwatch」などの長寿タイトルが並んだ。「Lineage Classic」もシェア6%で5位に入った。上位の大半は、発売から10年以上が経過した作品だという。
新作が選ばれにくくなっている背景には、新しいゲームを覚えるための時間的・心理的負担がある。足元のゲームは世界観やキャラクターだけでなく、成長システム、装備、ゲーム内通貨、課金構造、シーズンパス、デイリー・ウイークリーコンテンツなど、理解すべき要素が増えている。
これに対し、すでに遊んだ経験のあるゲームやその初期版は、ユーザーがルールや面白さを把握しているため、興味を持つまでのハードルが低い。AIを使って短期間で制作された低品質ゲームが増えるなか、ユーザーが評価件数や同時接続者数、更新履歴を確認したうえで新作を選ぶ傾向も強まっている。
◆各社はリスク分散へ、既存IPの復刻を加速
こうしたユーザー動向は、ゲーム会社の投資配分にも影響を及ぼしている。開発費は従来の1億ドル前後から、足元では2億〜3億ドル規模へ膨らんでいるが、ヒットは保証されない。このため各社は新規タイトルへの大型投資に偏るのではなく、実績あるIPの初期版を復活させ、比較的確度の高い需要を取り込む方向に軸足を移している。
その有効性は実績にも表れている。NCSOFTが2月11日に定額制でサービスを始めた「Lineage Classic」は、2000年代初頭のグラフィックスや戦闘、サウンド、インターフェースを再現し、90日で累計売上1924億ウォンを記録した。2026年第1四半期のNCSOFT業績をけん引したという。
Nexonのクリエイタープラットフォーム「MapleStory World」でも、クラシック系コンテンツが存在感を示した。原作の不便さまで再現した「MapleLand」は累計利用者240万人を記録。経験値やアイテムドロップ率を引き上げ、利便性を高めた「MaplePlanet」も、4月のオープンベータ開始から2週間で累計利用者34万5000人を集めた。
こうした流れを受け、各社は初期バージョンの再現や、サービス終了・中断タイトルの復活に相次いで乗り出している。
Riot Gamesは、「Lineage Classic」に続く形で、シーズン3をベースにルーンやマスタリー、チャンピオンなど初期コンテンツを再構成しつつ、現行版の利便性も盛り込んだ「League of Legends Classic」を先月30日に発売した。Twisted Fate、Warwick、Skarnerなど60体のチャンピオンに対応し、過去デザインを再現したクラシックスキンも無料で提供する。
Nexonは、「Dungeon & Fighter」の2009年当時を再現した「Dungeon & Fighter Classic」を2027年に披露する計画だ。Smilegateは、2003年の原作をベースにした「Grand Chase Classic」を先月16日に正式リリースした。
「KartRider」も別の形で同じ結論にたどり着いた。原作との差別化を打ち出した続編「KartRider: Drift」がサービス終了した後、Nexonは原作の名称と操作感を継承した「Crazy Racing KartRider」を6月23日にあらためて前面に打ち出した。
復刻戦略の背景には、消費層の変化もある。韓国コンテンツ振興院によると、2025年の韓国国内ゲーム利用率は50.2%と、前年から9.7ポイント低下し、3年連続の下落となった。とくに20代の利用率は15.3ポイント低下し、40代の7.4ポイント低下を大きく上回った。
ONE storeの「2025ゲーム利用トレンド」では、30代が購入者数、決済金額ともに最多で、40代は1人当たり決済額が最も高かった。一方、20代は購入者数こそ多いものの、クーポンやポイントを活用する傾向が強かった。業界では、実際に売上を支える中心層が30〜40代に絞られるなか、彼らが学生時代に親しんだ「MapleStory」「Lineage」「KartRider」といった長寿IPが再評価されているとみている。
クラシックゲーム拡大は、単なるノスタルジー訴求にとどまらず、実際に支出する30〜40代を正面から狙う戦略でもある。
◆焦点はノスタルジーと持続性の両立
もっとも、クラシック戦略は開発リスクやマーケティング費用を抑えやすい半面、別のリスクも抱える。原作を知る30〜40代のノスタルジーに依存する構造である以上、新規IPの開拓を並行して進めなければ、原作未経験の次世代へユーザーベースを広げにくくなる可能性がある。
同じIPを複数バージョンで同時運営する場合には、ユーザーが分散したり、各タイトルの差別化が難しくなったりする懸念もある。
業界関係者は「クラシックIPは、足元の売上と安定的なユーザー確保の両面で明確な強みがある」としたうえで、「ただ、これに依存しすぎれば、次世代を狙う新規IPの競争力が弱まるおそれがある。2つの戦略を並行して進めることが、今後のゲーム会社の課題になる」と話した。