オンラインレビューは消費者の購買判断を支える有力な情報源として定着した一方、情報が増え過ぎたことで、かえって選びにくさを招いている。米Business Insiderは、レビュー依存が消費者の「選択疲れ」を強めている実態を報じた。
米テキサス州在住のジェームズ・ハダウェイ氏は、商品を買う前に複数のチャネルで情報を丹念に調べるタイプの消費者だ。だが、レビューを参考に購入したベビーカーや食洗機、マットレスが、必ずしも満足のいく買い物にはならなかったという。
同氏は、それが「お金を無駄にしないために必要なプロセス」だと考えていた。しかし最終的には、「もっと良い選択肢があったのではないか」との疑念が残るようになったと明かした。
こうした傾向は、米消費者全体にも広がっている。Pew Research Centerが2016年に実施した調査では、米国人の10人に8人が、初めて商品を買う前にオンラインレビューを読むと答えた。Yelpが2026年に実施した調査でも、Z世代の多くがレストランやジム、美容院を選ぶ前に、少なくとも1つ以上のプラットフォームで情報を調べていることが分かった。
レビューは、ブランド広告や一部専門家の評価に頼っていた時代に比べ、実際の利用者の体験を参照できるという点で有用だ。だが、レビューの件数と選択肢が膨らみ過ぎた結果、判断の負担も増している。例えば、ピザ1枚を選ぶだけでも、15店分の評価を30分かけて確認した末に決められない、といった状況が起きている。
『The Paradox of Choice』の著者で、スワースモア大学名誉教授のバリー・シュワルツ氏は、「最高のものを探し始めれば、不幸への道はまっすぐだ」と指摘する。選択肢が無限にあるように見える環境では、小さな意思決定であっても心理的負担が積み上がるという見方だ。
こうした傾向は、インターネットプラットフォームの設計によっても強められている。GoogleはWebサイト本体より先に星評価を表示し、Amazonも価格と並んでレビューを目立つ位置に置く。AI検索エンジンも、リンクを示す前にオンライン評価を要約して提示する方向にある。
その結果、消費者は他人の評価に背中を押される一方で、レビューを書いた人物がどのような嗜好の持ち主なのか、自分に近い感覚を持っているのかを見極めにくい。
AIはレビュー文化をさらに複雑にしている。一部プラットフォームは数百件に及ぶ投稿をAIで要約し、短く圧縮した形で表示している。おおまかな評価を素早く把握するには便利だが、個別の嗜好や文脈が抜け落ちるリスクもある。
例えば、キュウリの香りが苦手な消費者がボディーウォッシュを低評価した場合でも、AI要約では単に「香りが良くない」と処理される可能性がある。特定の好みに基づく否定的な感想が、一般的な欠点として受け取られかねない。少数意見を過大に反映したり、誤った内容を含んだりする恐れも指摘されている。
偽レビューの問題も深刻化している。AIツールを使えば、虚偽の投稿を以前より容易に大量生産できるため、消費者にとっては真偽の見分けが一段と難しくなる。偽レビューを監視する団体の関係者は、レビュー操作は以前から大きな問題であり、一部事業者がレビューの相互交換や仲介業者を通じて投稿を集めていると指摘した。
米連邦取引委員会(FTC)は2024年、虚偽の評価や推薦レビューを禁じ、違反時に金銭的制裁を科す規則を導入した。ただ、プラットフォーム側の責任をどこまで問えるかについては、なお限界があるとみられている。
専門家は、レビューそのものを捨てるのではなく、使い方を見直すべきだと助言する。コロンビア・ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授は、「レビューを見る前に、自分の基準を先に決めるべきだ」と話す。
漠然と「最高のバー」や「最高のジム」を探し始めると、比較は終わらない。だが、「静かで席数が多い店」や「ウエイト器具とクラスが充実した施設」のように条件を具体化すれば、満足度は高まりやすいという。
すべての選択を最適化する必要はないというのが、専門家の共通した見方だ。多くの購買判断は、時間がたてば記憶にも残らない小さな選択にすぎない。重要な意思決定に時間を振り向ける一方で、日常的な選択はある程度ルーチン化した方がよいとしている。
最良のベビーカーは、専門家が1位と評価した商品ではなく、実際によく使う商品かもしれない。レビューは答えそのものではなく、判断材料の一つにすぎないという点が、この問題の核心だ。