スティーブ・ハンケ氏は、AIを「高コスト技術」だと指摘した。写真=Shutterstock

ジョンズ・ホプキンス大学の応用経済学教授、スティーブ・ハンケ氏は、AIがほぼ無償で広がり、人間の仕事を広範に置き換えるとする楽観論に疑問を呈した。AIは電力や水、GPUなどを大量に必要とする資源集約型の技術であり、導入コスト次第で普及や雇用代替の範囲は大きく制約されるとの見方だ。

米Business Insiderは2日(現地時間)、ハンケ氏が「AIが事実上コストなしで普及できるという考え方は現実離れしており、経済的にも誤っている」と指摘したと報じた。AIは大量の電力や水に加え、グラフィックスチップといったハードウェア資源を必要とするためだという。

Microsoft、Alphabet、Amazon、Metaなどの大手テック企業は、次世代AIモデルを支えるデータセンター投資を加速している。2026年の資本支出は合計で約7000億ドル(約105兆円)に達する見通しで、2027年には1兆ドル(約150兆円)に拡大するとの予測もある。

ハンケ氏は、AIの普及範囲は、AIが消費する希少資源のコストを企業がどこまで吸収できるかに左右されるとみている。

一方で、AIが大規模な雇用破壊を引き起こすとの見方にも慎重だ。企業が従業員を一斉に解雇し、AIに全面的に置き換える事態は考えにくいという。AIの導入・運用コストが、人を雇用するコストを上回るケースも少なくないためだ。AIが労働を代替できるとしても、すべての業務で採算が合うとは限らない。

ハンケ氏はまた、AI推進派がAIを従来型ソフトウェアと同列に扱う見方にも異論を唱えた。一般的なソフトウェアは一度開発すれば追加コストをほとんどかけずに繰り返し販売できるが、AIサービスは提供のたびに演算コストやインフラコストが継続的に発生するからだ。こうしたコスト構造を無視した過度に明るい見通しにも警鐘を鳴らした。

これに対し、AI楽観派は半導体やデータセンターの効率改善によって、コストは徐々に低下すると主張している。Teslaの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は、AIが生産性を大幅に押し上げて生産コストを引き下げ、豊かな時代をもたらすと予測してきた。長期的には貨幣の重要性が薄れ、AIが大半の仕事を代替するようになれば、政府は普遍的に高い所得を保障すべきだとの考えも示している。

ただ、ハンケ氏は以前から、AIは過大評価されており、潜在的に危険な技術だとみてきた。最近では、起業家のマーク・キューバン氏や投資家のマイケル・バリー氏も、AI投資の規模やNVIDIAを中心としたエコシステムへの懸念を示している。キューバン氏は、AIブームがNVIDIAに過度に依存している現状を「恐ろしい」と表現。バリー氏は、NVIDIAが顧客企業との取引を通じてチップ販売を支える構造について、投資支出の自己増殖的な膨張を招きかねないと警告した。

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