A.X K2のテスト結果を説明するキム・テユン氏(SK Telecom基盤モデル担当)。写真=SK Telecom

SK Telecomは8月4日、独自のAI基盤モデル「A.X K2」を前面に打ち出し、産業AI市場の開拓を本格化する方針を明らかにした。単純な質疑応答にとどまらず、長い文脈を理解し、外部ツールと連携しながら業務を遂行する「働くAI」として展開する。

キム・テユン氏(SK Telecom基盤モデル担当)は同日、同社ニュースルームのインタビューで、「最大の変化は、答えるAIから、自ら計画し実行するAIへ軸足を移した点にある」と説明し、A.X K2の特徴と産業分野への適用戦略を紹介した。

A.X K2は、総パラメータ数6880億の超大規模言語モデル(LLM)。従来モデル「A.X K1」と比べ、数学・科学分野の推論、韓国語知識、長文理解、AIエージェント関連の能力を強化した。

性能面では、国内外14項目のベンチマークで平均32.2ポイント改善した。長文理解とAIエージェント関連の評価では約83.9ポイント向上したという。超高難度の数学ベンチマーク「Apex」では、A.X K1の1.0から45.8に上昇し、AIME26は97.1を記録した。韓国語知識評価のKMMLU-Proは80.5、韓国文化理解評価のCLIcKは91.6だった。

一方で、モデル規模を拡大しながら、推論時に実際に使うパラメータ数は330億(パラメータ)に抑えた。推論性能を高めつつ、実運用に必要な計算コストを抑制する狙いだ。

キム氏は、性能向上の背景として、高品質データ、独自アーキテクチャ、多段階の強化学習を挙げた。学習量を単純に増やすのではなく、分野別の専門知識を含むデータを選別・精製し、推論能力を高めたとしている。

中核技術の1つが、同社独自開発のスパース・ゲート・アテンション(SGA)だ。複数回の対話、ツール呼び出し、長文書の参照が続くAIエージェント環境でも、文脈を高速かつ安定して処理できるよう設計した。

同社によると、入力長が3万2000トークンを超えると、スループットと遅延の両面で優位性が表れる。12万トークン入力時のトークン処理量は、A.X K1比で67.7%改善した。長時間の対話や大量の会議録、報告書を分析する業務で、応答速度とサービスの安定性向上が見込めるという。

SK Telecomは、テキストに加えて画像や音声を扱う派生モデルも開発した。ビジョン言語モデル「A.X K2 VL Light Preview」は独自のビジョンエンコーダを採用し、製造図面や文書、チャートなどの分析と構造化に対応する。

音声分野では、独自のオーディオ言語モデル「A.X K2 ALM」に加え、Kraftonと共同開発した「A.X K2 Raon Speech」を構築した。高難度の推論は大型モデルが担い、産業現場の細かな処理は軽量モデルが担う構成を採る。

適用先としては、鉄鋼メーカーのKGスチールと自動車部品メーカーのKoneqを対象に、製造業向けAIエージェントの実証を進める。生産ラインの過去の不良事例を学習させ、問題発生時に原因分析や対処方法を提示する。SK hynixの社内AIツール「LLM Chat」には軽量モデルを連携させ、半導体関連の知識検索や情報整理などを支援する。

国防や公共など、高いセキュリティが求められる領域では、外部と分離したオンプレミス環境を適用する。機関や企業の機密データを外部に持ち出さず、共通モデルの学習にも反映させない形で、内部ネットワーク内で特化学習を実施する方針だ。

SK Telecomは、国防部にA.X K1の軽量版を提供したのに続き、A.X K2の供給も準備している。オーディオ言語モデルを活用し、ボイスフィッシングのリアルタイム検知やフィッシング遮断といったセキュリティサービスへの適用も進める。

A.X K2の重みと推論コードは、Apache 2.0ライセンスで公開する。開発者やスタートアップが商用利用しやすいよう、無償ライセンス方針を維持し、APIやモデル最適化も支援する。

今後の後続モデルは、兆単位のパラメータ規模へ拡大する計画だ。エージェント強化学習やサイバーセキュリティ関連の能力を高めるとともに、ソウル大学、KAIST、Kraftonなどと次世代モデル構造を研究する。Rebellionsとは、国産ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)ベースのモデル駆動と商用サービスの実証を進める。

キム氏は「A.X K2は、韓国語と国内産業環境への理解に加え、データ主権、セキュリティ、開放性を備えたモデルだ」とした上で、「答えるAIを超え、働くAIへ進化することで、産業現場と日常の双方で体感できる価値を生み出す」と述べた。

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