韓国では、預金トークンの実証が電子決済代行(PG)各社や加盟店網、越境決済へと広がっている。商用化に向けた競争も、発行技術そのものから、どこで使えるかという利用基盤の拡大へと軸足を移しつつある。あわせて、包摂金融の対象拡大、単一銘柄レバレッジETFを巡る規制強化、重複上場審査の厳格化など、金融・資本市場を巡る制度見直しも進んでいる。
預金トークンを巡っては、第1段階の実証で利用先が一部加盟店に限られていたのに対し、第2段階ではカード会社やPGの加盟店網を生かした利用先の拡大が主なテーマに浮上した。DanalやToss PaymentsなどのPG各社も政府主導事業に加わり、銀行が発行する預金トークンを既存のオンライン・オフライン決済網に接続する動きが本格化している。
NHN KCPと新韓銀行が参加する「プロジェクト漢江」の第2段階でも、焦点は利用先の拡大と決済利便性の向上にある。端末の入れ替えや大規模なシステム構築を伴わず、既存の決済網を活用して加盟店の導入負担を抑える構想だ。決済と精算の同時処理が実装されれば、小規模事業者の手数料負担や入金までの時間を縮める効果も見込まれる。
実証の射程は国内の日常決済にとどまらない。KB国民銀行は日本のMUFG銀行と円建ての預金トークン決済を検証し、韓国内の小売決済中心だった取り組みをクロスボーダー決済へ広げた。今後は、銀行とPGの連携、加盟店の確保、制度整備を通じて、実利用の基盤をどれだけ早く築けるかが競争力を左右しそうだ。
包摂金融では、中・低信用者支援にとどまらず、対象が業種や雇用形態ごとに広がっている。外国人労働者を雇用する農漁業者や日雇い建設労働者、小規模事業者など、従来は金融サービスが届きにくかった層に向けた商品投入が相次いだ。
銀行各社は、優遇口座や生活安定ローン、大規模な包摂ローンを相次ぎ投入した。脆弱な借り手を一括りにするのではなく、資金需要や所得構造に応じて商品を細分化する動きが目立つ。小規模事業者向けでは、売上高や商圏情報を反映した信用評価の拡大、自治体と連携した融資支援の増加など、担保や従来型の信用スコアに依存した審査からの転換も進んでいる。
Pindaの「生活安定ローン」で限度額照会が増えたことは、中・低信用者の緊急生活資金ニーズがなお大きいことを示した。Naver Payの決済手数料支援も加わり、包摂金融の競争は、融資供給だけでなく、信用評価の改善や金融コストの軽減まで含む形へ広がっている。
資本市場では、単一銘柄レバレッジETFを巡る過熱感が強まり、金融当局と業界の対応が一段と強まっている。業界は、リバランス時点の分散や流動性供給者(LP)の取引縮小といった自主対応に着手した。一方、当局は投資限度やレバレッジ倍率の見直しなど、追加規制も検討している。
特定銘柄への資金集中が市場の変動性を高め、個人投資家の損失を拡大しかねないことが規制強化の背景にある。イ・オクウォン氏も、過熱が続く場合は個人別の投資限度の導入を検討し得るとの考えを示しており、今後は商品そのものの禁止よりも、資金偏在の緩和や急変時のショック抑制に重点が移る見通しだ。
上場制度を巡っては、重複上場や低評価企業への規律強化が進む一方、国内株式市場への資金流入を促す税制面の後押しは弱まるという、相反する動きもみられた。韓国取引所は3日、重複上場に関する審査を厳格化した。いわゆる「分割上場」に伴う親会社株主価値の毀損を、これまで以上に厳しく点検する方針だ。
11月からは、3年連続で業種内の下位にとどまる企業について、低PBR該当の有無も開示される見通しで、上場企業に対する企業価値改善や株主還元の圧力は一段と強まりそうだ。その一方で、RIA向け税制優遇の縮小が国内株投資の魅力を損なうとの懸念も出ており、市場規律の強化と長期投資インセンティブの拡充をどう両立させるかが課題として残る。
業績面では、金融各社の上半期決算発表が一巡するなか、インターネット銀行や地方金融を中心に収益性の鈍化が鮮明になった。K Bankは純利益が前年同期比28.7%減となった一方、SOHO向け融資は約2倍に伸び、法人金融拡大の余地を示した。IBK企業銀行とiM金融も減益となった。
地方金融では、規模の限界を乗り越える新たな成長戦略の必要性が改めて浮き彫りになった。Sh水協銀行は資産拡大を進める一方、収益性の防衛に軸足を置いた。
証券業界では、発行手形、トークン証券、退職年金、海外投資サービスなどへ事業領域を広げ、収益源の多様化を急いでいる。Samsung Securitiesは発行手形の認可手続きが終盤に入り、超大型投資銀行(IB)事業の拡大を控える。Shinhan Investmentは小口投資の口座管理事業者を増やし、STO市場の先取りを狙う。
Mirae Asset Securitiesは退職年金の積立金を大きく伸ばし、Hana Securitiesは外国人統合口座の取引を始めるなど、資産運用や海外投資基盤の強化も進めた。Korea Investment & SecuritiesとSamsung Asset Managementによる株式・ETF関連の情報や取引画面の改編もあり、競争領域は商品供給にとどまらず、プラットフォームの利便性や投資情報の拡充にも広がっている。
このほか、主要金融機関では人工知能(AI)を活用した業務・相談の高度化と、顧客別の預金商品拡充が同時に進んでいる。金融持株各社は生成AIの導入や人材育成を通じてAX基盤の整備を急ぎ、銀行は共同購入型やシニア特化型の預金商品で顧客層の細分化を進めている。技術革新と商品差別化を並行して進める戦略が、銀行業界の主要な競争軸として定着しつつある。
大型開発案件向け金融と地域拠点拡大を並行する動きも続く。Hana Financial Groupは大規模PFと地方の資産管理拠点を広げ、Woori Financial GroupとNH農協金融も、革新都市での金融タウン整備や地域密着型金融を通じて、非首都圏での営業基盤拡大に乗り出した。
インターネット銀行では、投資、送金、外貨サービスの利便性向上を通じて、生活金融プラットフォームとしての競争を強めている。KakaoBankは投資コンテンツへのアクセス性を高め、K BankとToss BankはAIベースの送金機能や自動外貨積立サービスを打ち出した。預金や融資にとどまらず、利用者の反復的な金融行動を自社プラットフォーム内に取り込む戦略が鮮明になっている。
フィンテック業界では、決済手数料支援やカード検索サービスの高度化に加え、公共データと企業の業務システムをつなぐインフラ事業も広がっている。小規模事業者や消費者向けの金融利便性向上を競ってきた各社の取り組みは、データ標準化や企業向けERP構築などB2B領域にも波及しており、事業の重心は消費者向け決済サービスから企業のデータ活用や経営管理分野へも広がり始めている。