韓国政府が、競争力低下が指摘されてきたMVNO市場のてこ入れに乗り出す。韓国科学技術情報通信部は3日、MVNOの料金・サービス競争力と事業者の自立性向上を柱とする支援策「MVNO 2.0」を公表した。RS型の5G・LTE料金プランに400Kbpsのデータ安心オプションを拡大するほか、5G卸料金率の引き下げや中小MVNO向け電波使用料減免の拡充も打ち出した。
通信業界によると、今回の対策の柱の一つはデータ安心オプションの拡大だ。MNOの料金プランを卸提供で受ける収益分配型(RS)プランのうち、これまでデータ安心オプションがなかった商品にも、追加費用なしで400Kbpsの低速通信対応を適用する。データ安心オプションは、基本データ容量を使い切った後も一定速度で通信を継続できる仕組みを指す。
これに先立ち、政府は基本的な通信利用の確保を目的に、移動通信3社のLTE・5G統合料金プランに最低400Kbpsのデータ安心オプションを盛り込むよう求めていた。その結果、移動通信3社は低価格帯の5Gプランにも同オプションを広げた一方、相対的にMVNOの競争力が弱まったとの見方が出ていた。
### QoS格差の是正で流出抑制に期待
MVNO業界では、今回の措置が移動通信3社とのサービス格差を縮めるきっかけになるとみている。先月のMVNO契約者数は1895人の純減となっており、移動通信3社が導入した5G・LTE統合料金プランに押された可能性があるとの分析もある。
MVNO業界関係者は「移動通信3社の統合料金プランにだけ400Kbpsのデータ安心オプションが適用された際には、MVNOに不利だとの不満があった」としたうえで、「今回の措置には、これまで指摘されてきた格差の一部を是正する意味がある」と述べた。
データ安心オプションは、価格に敏感なMVNO利用者にとって、追加料金への不安を和らげる材料になる。基本データ容量をわずかに超えただけで追加料金が発生する事態を避けやすくなるためだ。業界では、低価格の移動通信プランへの乗り換えを検討する利用者の流出抑制にもつながるとみている。
前出の関係者は「データ使用量が料金プランの境目にある利用者は、少し利用が増えただけでも追加料金が発生しかねない」とし、「データ安心オプションのある移動通信プランへ流れる利用者の引き留めに役立つ」と話した。
政府と移動通信3社はあわせて、事業者と料金プランに応じて5Gの収益分配型卸料金率を最大3ポイント引き下げる方針も示した。卸料金は、MVNOが移動通信3社のネットワークと料金プランを利用する対価として支払う費用を指す。
MVNO業界では、この引き下げを受け、移動通信3社より安い5G料金プランの拡大を見込む。同程度のデータ容量で価格を引き下げるほか、価格を据え置いたままデータ容量や特典を上積みした商品の投入も想定される。
中小事業者にとっては、電波使用料減免の拡大も直接的な支援策となる見通しだ。政府は中小MVNO事業者の電波使用料減免率を、従来の50%から90%に引き上げる。加入者当たり収益が低く、小規模事業者の比重が高い業界構造を踏まえると、各社のコスト削減に一定の効果が見込まれる。
### RM型のQoS対応は未定、フルMVNO普及も焦点
一方で、データ安心オプションの適用範囲や費用負担にはなお不透明な部分が残る。MNOが設計した収益分配型(RS)プランには同オプションが拡大されるが、MVNOが自ら設計する従量課金型(RM)プランについては、具体的な対応方針が固まっていない。
業界関係者は「従量課金型プランにもデータ安心オプションを付けるよう継続的に求めてきた」としたうえで、「政府が合理的な条件での卸提供を促すとした点は前向きだが、詳細条件はまだ確定しておらず、実際の内容を見極める必要がある」と述べた。
政府が導入を後押しする「サービス型MVNO(部分MVNO)」と、サービス設備に加えてトラフィック管理設備も備える「独立型MVNO(フルMVNO)」も、MVNO業界の自立性を高める要素として挙がっている。
現状では、多くのMVNO事業者が料金プランや請求システムを変更する際、移動通信会社やシステム事業者との別途協議が必要になる。部分MVNOとフルMVNOが市場に定着すれば、一定規模以上の事業者は独自に料金やサービスを設計し、利用者ニーズにより迅速に対応できるようになるという。
もっとも、MVNO業界では今回の対策について、市場構図を直ちに塗り替える政策というより、移動通信3社への流出を抑えるための下支え策との見方が強い。卸料金引き下げが最終的に消費者向け料金の引き下げにつながるかも今後の焦点になる。中小MVNOはもともと利幅の小さい商品構成で、マーケティング費や顧客管理費、システム関連費を踏まえると、大幅な追加値下げは容易ではないためだ。
MVNO業界関係者は「今回の措置で最低限の競争条件は整ったが、これだけで加入者が戻るかは別問題だ」とし、「MVNOならではの価格やサービスを打ち出せる実質的な条件整備が、今後も必要になる」と強調した。