Coldcardのハードウェアウォレットでファームウェアの脆弱性が悪用され、利用者の資産から約8800万ドル相当のビットコイン(BTC)が流出した。暗号資産メディアのU.Todayが3日(現地時間)に報じた。これを受け、セルフカストディの実効性を巡る論争が再び強まっている。
今回の事態について、Bruce Fenton氏らは「自分の資産は自分で守る」というセルフカストディの考え方が機能しなかった事例だと批判した。これに対し、初期のビットコイン開発者として知られるPeter Todd氏は、ハードウェアウォレットの欠陥による被害は、中央集権型プラットフォームが抱えるシステムリスクに比べればなお小さいと反論した。
Todd氏は、取引所インフラの破綻がソフトウェアの欠陥よりはるかに大きな損失を投資家にもたらしてきたと指摘した。例として挙げたのが、カナダの暗号資産取引所QuadrigaCXの破綻だ。被害額は2億ドルに上り、今回のColdcardの事案を2倍以上上回るという。
同氏は、秘密鍵の管理を第三者に委ねること自体が、資産保全上の根本的なシステムリスクだと強調した。
Todd氏は、個人資産を守るうえで本質的な課題は、ブロックチェーンの仕組みの複雑さではなく、重要情報を扱う基本的な文化の欠如にあると述べた。「12語のシードフレーズさえ失わなければいい」とし、「出生証明書のような重要書類を保管するのと同じように、利用者はその12語を書き留めて失くさなければいいだけだ」と説明した。
さらに、自動車の運転を引き合いに出し、「運転は数百時間に及ぶ集中を要し、ミスの代償が命に直結しかねない行為だ」と指摘。そのうえで、セルフカストディはそれに比べればはるかに単純なプロセスだとした。「現金を家の複数箇所に分けて保管するような発想と同じで、誰にでも思いつく明白な戦略だ」とも語った。
また、運転免許の教習に似た数週間の教育プログラムを導入すれば、人為的ミスによる致命的な失敗の発生率はほぼゼロに近づけられるとの見方も示した。低いエントロピーや想定外の状況に起因するリスクは残るものの、それでも自己保管の優位性は揺るがないというのが同氏の立場だ。
Todd氏は最終的に、脆弱性の本質はビットコインのコードそのものではなく、利用者側の責任意識の欠如にあると結論付けた。