EV普及が直ちに鉱物採掘依存の拡大を意味するとは限らないことを示した研究。写真=Shutterstock

中国では将来的に、電気自動車(EV)の生産に必要な主要素材の相当分を、廃EVや廃電池のリサイクルで賄える可能性があることが分かった。EVの普及拡大は新たな鉱物需要を生む一方、数十年後には廃車と廃電池が、電池やモーター向け素材の主要な供給源に転じる可能性があるという。

Ars Technicaは7月31日付で報じた。中国・南京大学のシン・シュンション研究チームは、2010年から2050年までの中国のEV製造需要と、再生資源として回収できる素材量を比較分析し、リサイクルが複数の重要元素の有力な供給源になり得ると結論付けた。

分析対象は、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、バッテリーEV、燃料電池車で使われる主要素材。電池向けではリチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、リン、ナトリウム、硫黄、黒鉛を、モーター向けでは銅、ネオジム、ジスプロシウム、サマリウム、セリウムなどを取り上げ、再資源化の可能性を検証した。

研究チームは、技術進展の速さとEV普及ペースを踏まえ、4つのシナリオを設定した。その上で、各時点の製造需要のうち、再生資源でどの程度代替できるかを示す指標を算出した。

その結果、EV市場の拡大に伴って廃車と廃電池も増え、時間の経過とともに、そこから回収された素材が製造サプライチェーンに再投入される構図が強まるとした。

もっとも、初期段階ではEV販売の増加が廃車発生を上回るため、再生資源の供給は十分ではない。だが、累積販売台数の増加に伴って電池の交換や廃棄が増えれば、再生原料の比率は段階的に高まる見通しだ。

商用利用では、車両より先に電池寿命が尽きる可能性も供給増加の要因になる。走行負荷が高い場合、電池性能の低下に伴う交換需要が発生し得るためだ。中国で広がるバッテリー交換ステーションも、追加的なリサイクル量を生む可能性があるとしている。

素材別では見通しに差がある。コバルトは、電池業界が低コバルト化やコバルトを使わない技術へ移行すれば需要自体が減る可能性があり、リサイクル由来の供給が比較的早い段階で需要を上回る可能性があると分析した。

一方、ニッケルとマンガンは、高性能電池の需要拡大を背景に、リサイクル比率が上昇しても供給不足が相対的に残る可能性があるとみる。モーター向けのレアアース元素についても、技術変化によって結果は変わり得るとし、セリウムが高価なレアアース素材をどこまで代替できるかが変数になると指摘した。

中国政府の政策も、リサイクル拡大を後押しする要因として挙げた。研究チームは、中国が一部の電池材料について、リサイクル率を足元の約40%から最大98%へ引き上げる目標を進めている点を指摘。2030年の新車販売に占めるEV比率を45%から60%へ高める政策も、需給構造に影響するとみている。

特に重要だとしたのが、電池の構成情報を管理する「バッテリーパスポート」制度と、廃電池を正規のリサイクル事業者へ流す規制の整備だ。電池の種類や含有素材を正確に把握できれば、効率的な回収につながるためだ。

ただ、リサイクルが直ちに新規採掘の代替になるわけではない。高い再資源化率を実現するには、廃電池の回収から選別、処理に至るまで、リサイクル体制全体の整備が欠かせないとした。

技術変化も不確定要因となる。黒鉛のように経済性が低い素材は、現時点でもリサイクルの採算が取りにくい。ナトリウム電池のような低コスト素材ベースの技術が普及すれば電池価格は下がり得るが、リサイクル事業者にとっては回収価値の低下につながる可能性がある。

中国のEVサプライチェーンは、新規鉱物の採掘を軸とする構造から、廃車・廃電池を循環利用する構造へ移行する可能性が高まっている。実際にリサイクルが主要供給源として定着するかどうかは、電池技術の変化に加え、回収体制の整備がどこまで早く進むかに左右されそうだ。

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