ハードウェアウォレット「Coldcard」の脆弱性を突いたとみられる不正流出が発生し、約500のビットコインウォレットから計594BTCが失われた。自己保管の有力な手段とされてきたハードウェアウォレットで被害が出たことで、暗号資産の自己保管を巡る信頼性に改めて疑問が広がっている。
ブロックチェーンメディアのU.Todayは2日(現地時間)、この件を報じた。これを受け、ビットコイン分析家のベンジャミン・コーウェン氏は、暗号資産市場がなお一般の信頼を十分に得られていない現状を浮き彫りにしたと指摘した。
コーウェン氏はX(旧Twitter)への投稿で、普段はニュースに頻繁に反応しないとしたうえで、多くの利用者が正しいと信じて選んだ保管手段によって大きな損失を被ったことは深刻だと述べた。Coldcardはこれまで、ビットコインの自己保管に適した比較的安全なハードウェアウォレットとして評価されてきただけに、市場への衝撃は小さくない。
問題の焦点となったのはシード生成の工程だ。脆弱なファームウェアのバージョンでは、本来頼るべきハードウェア由来のエントロピーだけでなく、予測可能な入力値からウォレットのシードを生成できる状態にあったという。攻撃者はこの欠陥を悪用し、秘密鍵を再構成して資金を流出させたとみられる。
ハードウェアウォレットでは、秘密鍵の生成工程が安全性の中核を担う。この部分に欠陥があれば、オフライン保管という強みも実質的に失われかねない。
ブロックチェーン調査関係者は、被害が確認されたのは約500のウォレット、流出総額は594BTCに上ると把握している。被害ウォレットの相当数は長期間ほとんど動きがなかったものの、その後短時間のうちに残高が流出したという。
さらに、盗まれたビットコインの大半は単一のアドレスに集約された。単発的な事故ではなく、組織的な窃取だった可能性をうかがわせる動きとして注目されている。
今回の被害は、自己保管そのものへの不安にも波及している。ハードウェアウォレットは、取引所やオンラインサービスへの依存を減らし、利用者自身が資産を管理する手段として普及してきた。
一方で、安全性が高いとみられていた製品の秘密鍵生成プロセスに欠陥が見つかったことで、自己保管を選んだ利用者の不安が一段と強まる可能性があるとの見方も出ている。
コーウェン氏は今回の事件を、暗号資産市場が抱える構造的な問題とも結び付ける。市場はなお、詐欺的なミームコインやラグプル、相次ぐセキュリティ上の欠陥に揺さぶられており、こうした事例が続くほど一般投資家は暗号資産を過度にリスクの高い領域と受け止めざるを得ないというのが同氏の見立てだ。
今回の事故は、特定製品の脆弱性が暗号資産市場全体の信頼低下につながり得ることを示した。中央集権型サービスのリスクを避けるために選ばれてきた自己保管で被害が発生しただけに、今後はハードウェアウォレットのファームウェアの安定性や、シード生成手順の検証を求める声が一段と強まりそうだ。