ハードウェアウォレット「Coldcard」の脆弱性を悪用した大量流出事案を受け、暗号資産の保管方法を巡る議論が再燃している。自己保管の構造的なリスクを示す事例だとの見方がある一方、特定製品の欠陥を保管方式全体の問題に広げるべきではないとの反論も出ている。
U.Todayによると、Coldcardのファームウェア脆弱性を突いた攻撃により、約1082.65BTCが41分間で流出した。これを受け、暗号資産のセキュリティと保管体制を巡る論争が強まっている。
Blocktower Capital創業者のアリ・ポール氏は、この事案を受けて、暗号資産を完全に安全な形で保管する手段は存在しないとの認識を示した。
発端となったのは、Coldcardの複数世代の製品に影響するファームウェア脆弱性だ。攻撃者はこの欠陥を悪用し、大量のビットコインを持ち出したとされる。
ジョナサン・グッドマン氏はX(旧Twitter)への投稿で、自身のColdcardウォレットから約160万ドル相当のビットコインが盗まれたと明らかにした。資産はコールドストレージで管理しており、秘密鍵はインターネットに一度も接続していないColdcard端末に保存していたという。その端末は銀行の貸金庫で保管していたと説明した。
ポール氏は、今回の流出事案は新たな脅威の出現というより、暗号資産保管が抱える構造的な限界を改めて浮き彫りにしたものだと位置付けた。特定の事案として片付けるのではなく、どの方式でも資産を完全に防御するのは難しい現実を示していると指摘した。
同氏は、自己保管と第三者カストディのいずれも完全な解決策にはなり得ないとみる。中央集権型の取引所やカストディ事業者に預ければ、ハッキングや管理不備のリスクがある。一方、利用者が自ら管理する場合でも、ハードウェアやソフトウェアの脆弱性を避けることはできないという。
さらにポール氏は、問題は特定のハードウェアウォレットメーカーに限らないと強調した。あらゆる暗号資産の保管方式は、脆弱性が生じ得るハードウェアとソフトウェアの基盤の上に成り立っているためだと説明した。
その上で、先進国では資産保全の観点から、現在の暗号技術よりも法制度や財産権保護の方が有効に機能する場合があるとの見方も示した。一方で、法制度や金融システムが不安定な国では、暗号資産が既存の金融システムを代替し得る有力な手段になり得ると付け加えた。
これに対し、ShapeShift創業者のエリック・ボーヒーズ氏は、今回の事案から暗号資産の保管そのものが不可能だと結論付けるべきではないと反論した。
ボーヒーズ氏は、リスクがゼロの保管方式は存在しないと認めつつも、各方式にはそれぞれ異なるリスクと長所・短所があると説明した。過去数年にわたり、数千億ドル規模の暗号資産が安全に保管されてきたとし、今回の件は自己保管全体の問題ではなく、特定製品の欠陥として捉えるべきだと主張した。
今回のColdcard流出事案は、自己保管と第三者カストディのどちらがより安全かという従来の論点に、改めて焦点を当てる形となった。ハードウェアウォレット業界のセキュリティ強化とあわせ、暗号資産の保管責任を個人と機関のどちらが担うべきかを巡る議論も続きそうだ。