ビットコイン市場では、リスクの見方が現物ETFの資金フローから、担保融資に伴う強制清算リスクへと移りつつある。機関投資家の資金がETF以外にも分散し、市場の需給をETFだけでは捉えにくくなっているためだ。
CryptoSlateが30日に報じたところによると、機関マネーは現物ETFに加え、オプション収益型商品やビットコイン担保融資、構造化信用商品にも流れている。従来のようにETFへの流入を需要回復、流出を関心低下のシグナルとみなす見方だけでは、市場全体を十分に説明できないという。
実際、ビットコイン現物ETFには7月14日から22日まで7営業日連続で約9億9900万ドルが純流入した。一方、その後は28日まで4営業日連続で流出し、流出額は約5億2600万ドルに達した。
期間を5月29日から7月28日まで広げると、日次集計ベースでは約44億6000万ドルの純流出となる。ただ、上場以降の累計純流入額は29日時点で約514億ドルを維持している。
市場ではこれまで、ETFへの資金流入が機関需要の回復、流出が投資家の関心低下を示すと受け止められてきた。だが、機関投資家がビットコインに投資する手段は増えており、ETFの動きだけでは一部しか見えないとの指摘が強まっている。
ある商品から流出した資金が市場そのものから退避したとは限らず、別のビットコイン連動商品へ移っている可能性があるためだ。
こうした変化は商品設計にも表れている。BlackRockの現物ETF「IBIT」は、28日時点の累計純流入額が約603億ドルに達し、直近30日のミッドスプレッドは0.03%だった。
一方、6月に上場したiShares Bitcoin Premium Income ETF「BITA」の28日時点の純資産は約5990万ドル。ポートフォリオの25〜35%にカバードコール戦略を組み込み、値上がり益の一部を分配原資に振り向ける設計で、想定分配率は12.1%とされた。
担保融資市場も拡大している。Galaxy Researchによると、2026年第1四半期の暗号資産担保融資残高は約670億ドルで、前年同期比で約50%増えた。
デジタル資産レンディングプラットフォームLednでは、1億8800万ドル規模のビットコイン担保資産担保証券(ABS)が、グローバル格付け会社から主要な投資適格級の評価を取得した。大型のデジタル資産レンディング証券化案件としては初の事例とされる。ただ、S&Pは、この評価がビットコインそのものではなく、ストラクチャーとシニア債を対象としたものだと指摘している。
Lednの最高経営責任者(CEO)、アダム・リース氏は、機関需要を把握するうえで単一の商品だけを見るべきではないと述べた。信用投資家はビットコインを担保に取っていても、短期的な価格方向には中立であり得るとし、こうした構造が「機関導入」の意味そのものを変えつつあると主張した。
問題は、こうした信用構造が下落局面で特定の価格帯を崩れやすくする可能性がある点だ。例えば、ビットコイン担保融資のLTVが50%で、清算基準が80%に設定されている場合、ビットコイン価格は約37.5%下落するまで持ちこたえられる計算になる。
ビットコイン価格を6万3889ドルとすると、清算水準は約3万9900ドルとなる。初期LTVが40%なら、同じ80%の基準に達するには50%の下落が必要で、清算水準は約3万1900ドルとなる。
リース氏は、レバレッジが高まるほど強制売却が増える可能性があると警鐘を鳴らした。「市場にレバレッジが積み上がるほど、清算基準を持つ複数のポジションの影響を受け、強制売却は増えやすくなる」と述べた。
見かけ上は長期資金に見える信用マネーでも、特定の価格水準では急速に不安定化し得るということだ。
マクロ環境も無視できない。米連邦準備制度理事会(Fed)は7月29日、政策金利の誘導目標レンジを3.50〜3.75%に据え置いた。インフレ率がなお高く、国債利回りも高水準にあるなか、投機的な長期資金への選好を弱める一方で、ビットコイン連動の債務商品のスプレッドを押し広げる可能性があるとの見方も出ている。
市場にはすでに防御的なシグナルも表れている。資産運用会社VanEckの6月集計では、ビットコイン現物ETFは22営業日のうち19営業日で合計50億ドルの流出となった。当時は価格モメンタムの鈍化に加え、プットオプションに傾く動きも確認された。
一方、強気シナリオでは、機関投資家がビットコイン担保を1つの信用資産クラスとして受け入れ、ABS発行の拡大、貸出金利の低下、流通市場でのスプレッド縮小、オプション収益型商品の残高増加が同時に進む可能性がある。
市場が注視すべき指標も広がっている。ETFの資金流出入は流動性の高い現物マネーの動きを映すが、今後はLTV、清算基準、流通市場のスプレッド、カストディの集中度も併せて見る必要がある――。今回の分析の骨子はそこにある。
次の大きな調整局面では、信用商品や収益型商品がビットコイン市場に安定資金を持ち込んだのか、それとも見えにくい下押し圧力を増幅したのかが、より鮮明になりそうだ。