フランス政府は22日、Teslaのドライバー監視型運転支援機能「Full Self-Driving(FSD)」について、フランス国内での承認を保留する方針を示した。速度超過を許容する仕様に加え、市街地での複雑な走行環境でドライバー監視が十分に機能しないことを問題視した。Electrekが報じた。
フィリップ・タバロ運輸相は動画声明で、FSDのフランスでの承認時期を問われ、「まだだ」と述べた。そのうえで「現時点で承認するには、安全面でのバランスが十分ではない」とし、FSDについて「自動運転システムではない」と明言した。
フランス側が主な懸念として挙げたのは2点だ。1つは速度超過の許容で、タバロ運輸相は「このシステムが速度超過を許していることを確認した」と説明した。
もう1つはドライバー監視のあり方だ。フランス側のデータでは、FSDは車線変更や交差点、ラウンドアバウトなど、市街地の複雑な場面でドライバーの注意を適切に維持できているとは評価しにくいとしている。
今回の判断は、Teslaの技術そのものを全面的に否定するものではない。フランスは、オランダでの承認だけをもって、自国の道路で自動的に利用を認める考えはないという立場を示した形だ。
Teslaは4月、オランダ道路交通庁(RDW)を通じて、オランダでFSDの監視型機能の承認を取得した。その後、各国で適用拡大を進めており、6月にはデンマークが4番目の承認国となった。
一方、フランスは、一国の規制当局による例外的な承認に依拠するのではなく、欧州連合(EU)レベルの共通試験基準に沿った承認枠組みを先に整えるべきだとの立場を取る。
このため、フランスはオランダや他の欧州各国、Teslaとの技術協議を続けている。仏運輸省の関係者は先週オランダを訪れ、関連データを確認した。今秋には、フランスの自動運転車エコシステムの関係者を集め、今後の方向性を議論する計画も明らかにした。
タバロ運輸相は、技術導入そのものには前向きな姿勢も強調した。「フランスはこうした技術を支持する」とする一方で、「道路安全を犠牲にしてまで推進することはない」と述べ、信頼できるデータと検証体制の整備を求めた。
欧州で同様の問題意識がフランスだけにとどまらない点も注目される。スウェーデンは6月、Teslaが速度超過につながる挙動を解消しない場合、FSDを認めるべきではないとの意見をEUに伝えた。欧州の規制当局は春以降、同様の懸念を示してきた。
速度超過を巡る論点は、フランスが新たに持ち出したものではない。FSDは以前から、ドライバーが制限速度を上回る設定を行える仕様が指摘されてきた。最近も、関連する補正機能の削除によって速度超過が生じたとの見方が出ている。
また、Teslaがこれまで規制当局に対し、FSDの安全性を巡って誤解を招きかねないデータを示してきた点も、審査上の重荷になっているとみられる。フランス当局はこの問題を巡ってすでにTeslaと摩擦を経験しており、こうした前例が欧州での規制議論でTeslaに不利に働く可能性がある。
今回のフランスの判断は、FSDを欧州で全面的に排除する措置というより、一国ごとの例外承認ではなく、EUレベルでの共同検証を求めたものといえる。Teslaが速度超過を許容する問題を解消し、複雑な市街地走行でもドライバー監視の仕組みが十分に機能することを立証できるかが、今後の承認審査の焦点となる。