Googleが2025年5月に自然言語型の検索機能「AIモード」を打ち出してから1年が経過した。検索結果をリンク一覧で示すのではなく、Geminiを基盤に対話形式で回答を返す仕組みは、オープンウェブの弱体化を招くのではないかとの懸念を当初から呼んでいた。実際、Google検索からの流入に依存してきたパブリッシャーや企業サイトでは、送客減への警戒感が強まっている。
Googleはこの1年、検索のAI化をさらに進めてきた。最近では、25年ぶりに検索ボックスを刷新し、写真や動画を検索条件に加えられるようにしたほか、AIエージェントが利用者に代わって検索する機能も搭載した。
では、こうした変化はGoogleの検索エコシステムにどのような影響を及ぼしたのか。少なくとも、利用者が従来以上にGoogle内にとどまる傾向が強まっていることは確かなようだ。
米New York Timesが研究者による3件の調査を基に報じたところによると、利用者は従来のGoogle検索に比べ、AIモードでは1~9分長く滞在していた。検索・マーケティング分野のニュースレター「Growth Memo」が2025年10月に公表した調査では、全セッションの約75%で、利用者はAIモードから外部サイトへ移動しなかったという。
これまでアクセス流入を収益源としてきたメディアや企業サイトにとっては、この傾向は深刻だ。Google検索の後に利用者が外部サイトへ遷移せず、AIが生成した要約だけを読むケースが増えた結果、自社サイトへの訪問者や検索流入が減っているとの声が各社から上がっていると、New York Timesは伝えている。
テクノロジーメディアThe Vergeの編集長、ニレイ・パテル氏は、Google検索経由のトラフィックが事実上消える「Google Zero」は、パブリッシャーにとってすでに現実になっていると指摘した。AIモードの登場によって、それまで緩やかに進んでいた変化が一気に臨界点に達したと受け止められるようになったとも述べている。
これに対しGoogleは、自社がオープンウェブを脅かしているとの見方を否定している。
Google検索部門の副社長、リズ・リード氏は2025年8月のブログ投稿で、「会社の基本哲学は変わっておらず、現在も数十億件規模のクリックを比較的安定して外部サイトへ送っている」と説明した。検索流入が減っているとする報道については、「不正確で、欠陥のある調査手法に基づいている」と反論した。
一方でGoogleは、検索へのAI機能拡大と並行して、AIモードの先にあるウェブへ利用者を促す機能も導入している。AIによる回答の一部には外部サイトのプレビューを表示するほか、利用者が「preferred sources」を設定すると、AIが指定したメディアやニュース媒体をより頻繁に引用する機能を備えた。パブリッシャーやコンテンツ制作者が検索上で自社コンテンツの露出を高めやすくするプロフィール機能も用意している。
ただ、AI検索の拡大とともに、利用者がウェブサイトを直接訪れる機会が減っていることは、データでも示されている。IT企業Cloudflareによると、現在のウェブトラフィック全体の50%超は人間ではなく、AIボットや自動化プログラムによるものだという。
さらに、2025年6月から2026年4月にかけて、金融、出版、小売分野では企業サイトへの実際のユーザー流入が約40%減少した。Cloudflareは、ウェブの根本的な経済モデルはすでに変化しており、Googleのようなチャットボット型検索サービスが十分な抑制なしに拡大すれば、オープンウェブそのものが危機にさらされかねないと警告している。
かつては、ワールドカップで活躍した選手を検索すれば、ユーザーはスポーツサイトやソーシャルメディアの投稿をクリックし、解説や反応を見に行った。だが現在は、AIボットがウェブ上の情報を収集し、選手の記録などを検索画面上で直接提示するため、利用者はGoogleを離れにくくなっているとNew York Timesは報じた。米Wall Street Journalも、AI回答の検索統合によってウェブサイトのクリックが減る可能性があるとして、一部企業がGoogleとの広告関係の見直しを進めていると伝えている。