国際通貨基金(IMF)は、サハラ以南アフリカで電力やインターネット接続、デジタル技能の整備が進めば、AI導入によって今後10年間の経済生産が約4%押し上げられる可能性があるとの分析を示した。一方、こうした改革が進まなければ、増加幅は同期間で0.2%にとどまると見込んでいる。
21日付のCryptopolitanによると、報告書が重視したのはAIそのものではなく、それを支える基盤インフラだ。IMFは、政府がインフラ投資を拡大し、労働者のAI関連スキルを底上げできれば成長効果は大きくなる一方、電力網やインターネット接続、デジタル技能の整備が進まなければ、AI普及の恩恵はほぼ失われると指摘した。
共同執筆者のアンドルー・ティピンは、改革が進まない場合の0.2%増という試算について、「率直に言って、四捨五入の誤差レベルだ」と述べた。
IMFは、サハラ以南アフリカが直面するAIのリスクは先進国とは異なると分析する。高所得国ではAIによる雇用代替が主要な課題になっているのに対し、同地域では技術の導入と普及が十分な速度で進まず、地域間の格差が拡大するリスクの方が大きいという。
実際、同地域のAI導入率は世界的に見ても低水準で、南アジアをわずかに上回る程度にとどまるとしている。
最大の制約要因は電力だ。地域人口の約半数は安定した電力供給を利用できていない。ティピンは「電力がなければ、何かを進めるのは難しい」と語った。
IMFは、学校や病院などの公共施設を中心に電力網を整備し、小規模電力網の構築を進めることが、地域のデジタル拠点づくりにもつながるとみている。データセンターについても、電力需要を呼び水に新たな電力設備の整備を促す事業になり得るとした。
もう1つのボトルネックはインターネット接続だ。報告書によると、2024年時点のアフリカのインターネット利用率は38%で、世界平均の68%を大きく下回る。IMFは、光ファイバーインフラへの投資やオープンネットワークの拡大が、接続コストの引き下げと利用範囲の拡大につながると説明した。
民間投資も動き始めている。MicrosoftとG42は、ケニアで地熱エネルギーを活用して運用する、投資額10億ドル(約1500億円)、100メガワット(MW)級のデータセンターキャンパス建設計画を発表した。
Cassava TechnologiesとNVIDIAは、南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、エジプト、モロッコの5カ国にGPUを1万2000基設置する、総額7億ドル(約1050億円)規模の契約を結んだ。
ただ、IMFはこうした資本投下が一部の国に偏っている点をリスク要因とみている。アフリカのデータセンターは約160カ所と、世界全体の約5.5%に相当するが、そのほぼ半数が南アフリカ、ナイジェリア、ケニアの3カ国に集中しているという。
報告書を主導したIMFアフリカ局のマルティン・シンドラー副局長兼ミッション責任者は、「AIが追加的な成長を生み出せるかどうかは、政策変更にかかっている」と述べた。AI投資とインフラ整備が少数国にとどまれば、域内経済の底上げよりも国ごとの格差拡大につながりかねないとの見方を示した。
IMFは、サハラ以南アフリカにおけるAIの成長余地は、技術そのものよりも、電力、通信、人材育成に関する政策をどこまで迅速に整備できるかに左右されると結論づけた。