英バッテリー技術企業のSuperdielectricsは、水系亜鉛電池の独立試験結果を公表した。AIデータセンター向けエネルギー貯蔵装置(ESS)市場を主な用途として見据え、高出力環境での長寿命、高速充放電、安全性を強みとして打ち出す。
米ITメディアのTechRadarが13日(現地時間)に報じた。英ケンブリッジに本社を置くSuperdielectricsは、AIデータセンターや再生可能エネルギー設備での活用を想定した次世代の水系亜鉛電池技術を公開した。
同社が特に注目するのはAIデータセンター分野だ。AIデータセンターでは大規模演算に伴って瞬間的な電力需要の変動が大きく、ピーク電力を吸収しながら迅速に充放電できるESSの重要性が高まっているという。
Superdielectricsは、自社電池がこうした高出力環境に適しており、再生可能エネルギーと連動した電力貯蔵だけでなく、重要インフラの電力安定化にも活用できるとしている。
中核技術は自社開発の高分子セパレーターだ。特許ベースの技術で、水系電解質中でもイオンが高速に移動できるよう設計したという。
原材料には比較的豊富な金属である亜鉛を採用した。リチウムイオン電池に比べ、原材料コストやサプライチェーンの安定性でも競争力を確保できると強調する。リチウムと比べて、亜鉛はサプライチェーンリスクや地政学要因の影響を相対的に受けにくいとしている。
独立試験の結果について同社は、室温での繰り返し充放電試験で、自社の亜鉛電池がリチウムイオン単セルと比べて最大13倍の寿命を記録したと説明した。試験条件は10分充電、10分放電、放電深度(DoD)100%だった。
放電性能も改善したという。36秒間にわたり定格容量の85%以上を維持し、従来のリチウムイオンセル比で約10倍改善したとしている。充電性能では、1分12秒で定格容量の70%以上を回復し、約8倍向上したと明らかにした。
Superdielectricsの最高技術責任者(CTO)、シェリー・ブラウン氏は、今回の試験について中核技術に対する独立した性能検証だと位置付けた。
ブラウンCTOは「高分子セパレーターは、高速なイオン移動と水系電解質の高い安全性を両立する」としたうえで、「高出力・高頻度の充放電が繰り返される環境に適したエネルギー貯蔵技術だ」と述べた。
さらに「現在のリチウムイオンベースのシステムは、高い電力負荷に対応するため、過剰な容量増設や追加の安全設備が必要になる場合が多い」とし、「水系亜鉛電池はそうした負担を軽減する代替手段になり得る」と付け加えた。
データセンター向けでの適用性も差別化要因として挙げた。現在、リチウムイオンベースのESSは火災リスクを踏まえ、データセンターの外部に設置されるケースが多い。これに対し同社は、水系電解質を用いる亜鉛電池は相対的に火災リスクが低く、データセンター内への設置にも適する可能性があると主張した。
AIデータセンターのように充放電が頻繁に繰り返される環境では、リチウムイオン電池は劣化が進みやすい一方、亜鉛電池はこうした環境下でも性能低下を抑えやすいという。ブラウンCTOは「多くのデータセンターは、リチウムイオン電池の寿命問題を踏まえ、実際に必要な水準を超える大容量の貯蔵設備を構築している」とし、「当社技術は、こうした過剰設計の負担を減らすことに焦点を当てている」と語った。
一方、商用化に向けた課題も残る。亜鉛電池は一般にリチウムイオン電池よりエネルギー密度が低いとされる。Superdielectricsも今回の発表では、エネルギー密度や貯蔵容量に関する具体的な数値を開示していない。このため、長時間のバックアップ電源を必要とする大規模データセンターで、リチウムイオン電池を完全に代替できるかどうかは、なお検証が必要だとの見方が出ている。
業界では、今後ラック単位の製品へ拡張した際、単なる電力バッファにとどまらず、長時間運用向けESSとして実用性を示せるかが競争力を左右するとみられている。
安全性を前面に打ち出した非リチウム電池の開発競争も続いている。中国の研究陣は水系電池技術の研究を進めており、自動車業界ではナトリウムイオン電池の適用拡大も進む。特にナトリウム電池は低温環境での性能に強みがあるとされ、電気自動車市場でも用途を広げている。こうしたなか、Superdielectricsの水系亜鉛電池がAIデータセンター市場で実際の商用競争力を示せるかどうかに関心が集まっている。