7月14日の記者懇談会で説明するFigmaのユウキ・ヤマシタCPO(写真=デジタルトゥデイ)

Figmaは、AIによるプロトタイピングの枠を広げ、構想からデザイン、コード、最終的な製品化までを一貫して支える「フルスタック」型の制作基盤を打ち出した。コードやモーション、AIを単一のキャンバスに統合し、プロダクト開発の流れを分断せずにつなぐ狙いだ。

同社のユウキ・ヤマシタCPO(最高製品責任者)は7月14日、ソウル・汝矣島のコンラッドで開いた記者懇談会で、「アイデアから最終デザイン、製品まで、文脈を切り替えたり創造性を妥協したりすることなく進められる、フルスタックの制作空間を目指している」と述べた。

こうした戦略の背景には、AIの普及でプロダクト開発のハードルは下がった一方、成果物の差別化が難しくなっているとの問題意識がある。ヤマシタCPOは、AIの広がりによって新しいアプリの公開件数は急増したものの、ユーザーに繰り返し使われるアプリが同じように増えているわけではないと指摘した。

同氏は、AIが出した結果をそのまま受け入れてしまう状態を「静かな降伏(quiet surrender)」と表現した。「最初に作ったアプリはすごく見えるかもしれないが、今ではそれが新しい平均になっている。誰でもその水準に到達できる以上、ありきたりではない答えを考え、さらに引き上げていく必要がある」と強調した。

課題として挙げたのが、AI活用が個人単位に分散しやすい点だ。各自がそれぞれのAIエージェントで試作品を作るなか、成果物やフィードバックが複数のツールに散らばり、チームでの共有も遅れがちになるという。Figmaはこの解決策として、人とAIエージェントが同じ空間で作業する「マルチプレイヤーキャンバス」を提示した。

フルスタック戦略の中核を担うのが、既存のAIプロトタイピングツール「Figma Make」と、新たに公開した「Code Layer」だ。Figma Makeは、プロンプトと既存デザインをもとに動く試作品を生成する機能で、実際のコードリポジトリと連携し、変更内容をプルリクエストとして提出する段階まで拡張しているという。

Code Layerは、コードベースの試作品をFigmaのキャンバス上に載せ、複数案を並べて比較・修正できる機能。コードで作成した画面を編集可能なデザインレイヤーとして取り込み、その変更を再びコード側へ反映することも可能だ。Figmaはコードを、デザイン後の成果物ではなく、画像やベクターと同じように扱える制作素材と位置付けている。

もっとも、Code Layerがそのまま完成済みの製品コードを置き換えるわけではない。ヤマシタCPOは「現時点では、やりたいことを説明するための、より豊かな仕様書であり、何が可能かを示す概念実証(PoC)に近い。実際の製品に適用するには、なお多くの細かな作業が残っている」と説明した。Code Layerは7月から、限定ユーザー向けにアーリーアクセスを始める。

Figmaは、試作品の表現力を高める機能群もキャンバスに統合した。「Figma Motion」は、タイムラインとキーフレームを使ってアニメーションを作成し、コードとして書き出せるようにする。シェーダー機能では、光や質感、ぼかしなどの視覚効果をAIプロンプトで生成し、利用者が詳細なパラメータを直接調整できる。

複数のAIモデルと画像処理フローをつなぐ「Figma Weave」も、段階的にキャンバスへ組み込む。単一のプロンプトで結果を生成するだけでなく、照明や背景、画風、動画変換といった要素を工程ごとに制御できるよう設計した。AIが下書きを作り、人が手を加えて仕上げることで、制作者のコントロールを保つ狙いがある。

懇談会に出席したNaverのウ・サンフン氏は、生成AIを活用したサービス試作の過程でFigma Weaveを使った事例を紹介した。WeaveでAI作業の工程を連結し、結果を細かく調整することで、少人数の開発者とデザイナーでも、ビジュアルコンセプトとサービスの流れを素早く具体化できたという。ウ・サンフン氏は「Weaveを使うと、制御可能なデザインができる。デザインをエンジニアリングへ昇華する過程だと表現している」と述べた。

FigmaのAIエージェントは、反復作業の自動化や複数のデザイン案の生成も担う。チーム固有のデザインルールや業務手順を「スキル」として学習させるほか、自然言語の指示によるカスタムプラグイン作成も支援する。ユーザーは、同僚やそのAIエージェントの作業過程も同じキャンバス上で確認できる。

ヤマシタCPOは「Figmaの最大の競争力は、最初からマルチプレイヤーのコラボレーションを前提に作られている点だ」としたうえで、「Webサイトやアプリ、動画、モーションなど成果物の形式を問わず、あらゆるデジタル体験の制作を支援することが目標だ」と語った。

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