写真=政策セミナーで生成AIの創作活用の方向性を説明するNC AIのナ・ギュボン氏

ゲーム業界で人工知能(AI)の活用が、開発支援ツールの枠を超えてライブサービス運営にも広がってきた。こうした流れを受け、文化体育観光部は中小ゲーム会社やスタートアップ向け支援の拡充に加え、関連法制度の整備も進める方針だ。

韓国ゲーム政策学会が主管し、ゲーム記者団が主催する「第2回 ゲーム記者団 政策セミナー」が14日、ソウル市鍾路区の青年財団会議室で開かれた。セミナーではNC AIとKraftonが、ゲーム制作とライブサービス運営におけるAI活用事例を紹介。質疑応答では、文化体育観光部の支援策や法制度整備の方向性も議論された。

◆NC AI「量産より、新たな試みと完成度向上に使うべき」

NC AIでバルコ事業チーム長を務めるナ・ギュボン氏は、「技術は創作を本当に増強するのか」をテーマに講演した。AIによってゲーム制作のハードルが下がったのは事実だとした上で、それがそのまま創作的価値の向上を意味するわけではないと指摘した。

同氏によると、SteamがAI利用の開示ポリシーを導入した2023年夏と比べ、2025年の新作発売本数は42%増加した。2025年に発売されたタイトルのうち、22%はAI利用を開示していたという。

一方で、ユーザーの関心が新作へ一様に移っているわけではないと分析する。調査対象となった総プレイ時間のうち、新作が占める割合は14%にとどまり、大半は既存タイトルで発生していたという。

その上で同氏は、AIの価値は「より速く、より多く作る」ことではなく、「これまで試せなかったことを可能にする」点にあると強調した。小規模クリエイターや学生でも、自身の経験や物語をゲームとして形にしやすくなり、制作期間の制約から見送ってきた細部表現も補完できるとした。

具体例として挙げたのが、「Lineage M」の背景原画制作だ。同作はクォータービューのゲームで、原画担当者には日常的に接しにくい視点や角度を正確に描く力が求められる。担当者は3D生成ツール「バルコ3D」で希望する構図を先に組み立て、それを基に原画を制作することで、作業時間を短縮しつつ細部表現を補強したという。

NC AIはこのほか、リップシンク技術「SyncFace」を活用し、制作スケジュールの都合で省略していた比重の小さいキャラクターの口の動きまで実装した事例も紹介した。

AIが生成する成果物の品質について同氏は、「良く言えば80点、厳しく見れば60点程度」と表現した。ただ、既存のワークフローの中で人が修正・補完することで、必要な品質水準まで引き上げられると説明した。AIで生まれた余力は、コンテンツ量の拡大よりも、これまで諦めていた作業の補完や完成度向上に振り向けるべきだという考えだ。

生成AIの学習データや権利処理も主要課題として挙げた。バルコ3Dなどのゲームアセット生成ツールの開発では、NCが保有する既発売タイトルや未発売プロジェクトのアセットを主に学習に活用したという。外部データが必要な場合は、利用範囲や生成物の権利、紛争発生時の責任範囲を契約で整理した上で活用しているとした。

◆Krafton、勝率予測や不正検知、AI相棒を実運用へ

KraftonのAI for Game R&D室でソン・ジュンシク氏は、「PUBG: BATTLEGROUNDS」に導入したeスポーツAI、アンチチートAI、AI相棒キャラクター「PUBG Ally(パブジー・アライ)」の3事例を発表した。

eスポーツAIでは、試合終盤で残存チームが絞られた局面において、どのチームの優勝可能性が最も高いかを推定する勝率予測モデルを構築した。一般ランク戦のデータで学習したモデルをプロの大会に適用したところ、予測性能が大きく低下したという。プロ選手のプレイ傾向や戦略が一般ユーザーと大きく異なるためだ。

このため、蓄積してきた大会データ約9000試合分を学習に用いてモデルを最適化した。3チームが残る場面では単純計算で各チームの勝率は33%だが、アルゴリズム適用後は勝利チームの予測精度が約88%まで高まったと説明した。

同氏は、勝率予測の目的は単に結果を当てることではないと語る。「PUBG: BATTLEGROUNDS」では、試合序盤に選手が装備を整えながら移動する間、交戦が少ない時間帯が生じる。Kraftonは、勝率や移動経路、交戦可能性といったデータを中継画面に提供し、解説者が試合状況を説明する材料として活用できるようにした。主要シーンを素早く抽出するハイライト機能にもAIを取り入れている。

アンチチート分野では、プレイパターンの分析を通じて不正行為が疑われるユーザーを選別している。1日当たり2000万人超の利用者を対象に不正検知を行う必要があるため、重量級モデルを使えば運用コストが膨らむ。このため、軽量モデルをベースに精度を高める方向で研究開発を進めたという。

現行システムでは、1日当たり約1万件の疑わしい事例を検知している。ただし、検知したからといって直ちにアカウントを制裁対象とするわけではない。別途の検証を経て、実際の不正行為かどうかを確認した上で制裁を決める仕組みだ。

3つ目の事例がAI相棒キャラクター「PUBG Ally」だ。NVIDIA ACE技術を基盤とし、ユーザーのPC上で動作する20億パラメータ規模の小型言語モデルを活用する。音声命令とゲーム状況を認識し、移動やアイテム確保などの行動を実行するほか、会話の流れを踏まえて戦略判断も行うよう設計した。

正式ベータサービスに先立って実施したオフラインテストには、約1000人が3週間参加し、約4万試合分のプレイデータを確保した。これらのデータはモデル学習に活用したという。ユーザーの発話に対する応答は大半が0.8秒以内で、遅延が生じた場合でも99%は3秒以内に反応したとしている。

Kraftonはこの技術を基に、先月17日から今月1日までの2週間、アーケードモードで「Ally Duo」をベータ提供した。ユーザーがAIキャラクター「エラ」と2人チームを組み、サノックマップでプレイする形式で、韓国語、中国語、英語の音声インタラクションに対応した。

今後は、自社のマルチモーダルモデル「Raon」の研究成果も、ゲーム内AI機能の高度化に生かす計画だ。

◆文化体育観光部、ゲームAI支援を拡充 法整備も並行

文化体育観光部で文化人工知能政策課長を務めるコ・ヨンジン氏は、今年、中小ゲーム会社やスタートアップ向けに、AIソリューションの利用支援や教育、AI活用型ゲーム制作支援などとして約100億ウォン(約11億円)を投じていると明らかにした。2027年度の関連予算については、現状の少なくとも1.5倍に増やすことを目標にしているという。

同部は、仮称「人工知能コンテンツ振興法」の年内発議も進める。AIコンテンツ支援の法的根拠や透明性義務、コンテンツの定義などを検討しており、規制強化ではなく、AI活用の過程で生じる障害の解消を主眼に置くと説明した。

一方、現場からは、AIの適用形態がゲームごとに異なるため、一律の基準を当てはめるのは難しいとの声も上がった。法律事務所Yulchonの弁理士、キム・ミョンフン氏は、生成AIによるセリフや音声をゲーム内でどう表示するのか、事前に結果を予測しにくいAIコンテンツを既存のゲーム物等級分類体系でどう審査するのかといった具体的な基準が必要だと指摘した。

支援政策を巡ってコ氏は、KraftonやNCのような先行大手と、中小企業・スタートアップとの間でAI活用水準に差がある点に言及した。その上で、現在は中小企業中心の支援策を進めているが、今後は大手による先導的な技術開発も視野に入れた形へと支援対象を広げる案も検討していると述べた。

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