タイ中央銀行は、不正資金対策の一環として、USDTをはじめとするステーブルコインの高額取引に対する監視を強化する。対象は暗号資産分野にとどまらず、現金取引や両替、金地金取引にも広がる。500万バーツを超える現金預け入れについては、資金源の開示を求める方針だ。
13日付のCointelegraphによると、タイ中央銀行はタイ証券取引委員会と連携し、USDT、現金取引、両替取引に対する監視を進めている。不正資金の流れを把握し、遮断につなげるのが狙いだ。
背景には、中国系の詐欺組織と結び付いたコールセンター犯罪が地域全体に広がっていることがある。当局が問題視するのは、出所が不明な資金の流通だ。詐欺コールセンターなど、疑わしい経路を通じた資金が含まれている可能性があるとしている。
タイ中央銀行は、ステーブルコインが国境を越える大口資金移動の手段として急速に利用されている点を重視している。決済がほぼ即時に完了するため、不正資金の移動にも使われかねないとみているためだ。ビタイ・ラタナコン総裁は現地メディアThe Nationのインタビューで、「今回の対策は短期間で終わるものではない」「複数の戦略を同時に進める」と述べた。
監視対象はステーブルコインだけではない。商業銀行に課すコンプライアンス上の監視範囲を、現金取引、両替所、金地金取引、疑わしいステーブルコイン取引へと広げる。対象機関が腐敗や不正取引の経路として悪用されるのを防ぐ考えだ。
現金取引に対する規制も強化する。高額の現金取引には資金源の申告を求めるほか、明確な理由なく高額紙幣を少額紙幣に大量に交換する行為も監視対象に加える。500万バーツを超える現金預け入れには、資金源の開示が必要になる。
タイは暗号資産に前向きな市場として知られる一方、デジタル資産やステーブルコインを使った決済は、依然として中央銀行が禁止している。暗号資産の売買自体は合法だ。最大手取引所Bitkubの1日当たり取引高は2600万ドル(約39億円)規模で、CoinGeckoによると、このうち約40%は為替性の強い取引として集計された。取引ペアではUSDT/THBが最大の比率を占めた。
こうした流れの中、タイの金融機関はすでに大規模な口座対策を実施している。タイの銀行は2025年、他人名義口座や不正資金、疑わしい取引の摘発の一環として、銀行口座300万件を凍結または利用制限した。ただ、この措置では数千人の個人投資家や適法な企業まで影響を受け、現地では「取り締まりの手法を誤っている」との批判も出ていた。
今回の措置は、ステーブルコイン取引の監視を既存の現金規制と結び付け、資金フロー全体を点検する色彩が強い。タイ市場では今後、暗号資産取引の合法性とは別に、USDTを含むステーブルコインの高額取引を巡って、銀行や取引所による確認手続きが一段と厳格化する可能性がある。