米ペンシルベニア州立大学の研究チームは、周囲の光で発電し、化学物質の検知から演算までを単独で行う自律駆動型の集積回路を開発した。センサー、ロジック回路、電源を1チップにまとめた構造で、電池交換が難しいIoT機器やエッジコンピューティング分野での活用が期待される。
米TechRadarによると、研究チームは13日(現地時間)、太陽光だけで検知と演算が可能な自律駆動チップの開発成果を明らかにした。
最大の特徴は、センサー回路、演算回路、電力供給機能を別々のチップで構成する従来方式ではなく、1チップ内に垂直方向で積層した点にある。
複数の半導体ダイを接続する構成ではなく、単一チップに機能を集約することで、基板面積と配線長を削減した。これにより、電力損失や信号遅延の抑制を狙う。
チップは3層構造を採る。最上層にはグラフェンベースのセンサーを配置し、液体中の化学物質を検知して電気信号に変換する。中間層にはセンサー信号を処理する半導体ロジック回路を搭載し、最下層には周囲光を電力に変えるシリコン太陽電池を組み込んだ。研究チームは、MoS2やWSe2などの2次元半導体材料とグラフェン、シリコン太陽電池を、1の3次元構造として統合したとしている。
論文の共同著者であるサプタルシ・ダス教授は、シリコン、グラフェン、MoS2、WSe2といった異種材料を3次元構造に統合し、検知、演算、エネルギーハーベスティングを同時に担う自律駆動システムを実現したと説明した。機能ごとに分けた別チップを接続するのではなく、それぞれをナノメートル級の近接距離に配置したことが大きな特徴だという。
研究チームによれば、機能を1チップに統合したことで小型化に加え、配線長の短縮による電力損失と信号遅延の低減も見込める。ダス教授は、検知、演算、エネルギーハーベスティングをナノスケールで高密度に集積すれば、面積とインターコネクト長を削減でき、エネルギー効率の向上にもつながると述べた。
こうした研究が注目される背景には、IoTとエッジコンピューティング市場の拡大がある。遠隔センサーや産業用IoT機器では、設置環境によって電池交換や充電が難しいケースが多く、外部電源なしで長期間動作できる低消費電力半導体の実現が課題となってきた。
研究チームは、今回のチップはなお特定用途向けの小型回路の段階にとどまるとしつつも、電池を使わない電子機器の実現に向けた方向性を示した点に意義があると評価した。
再生可能エネルギーを活用するバッテリーフリー機器への関心が高まる中、センサー、演算部、電源を単一の集積回路にまとめる設計手法は、今後さまざまな分野に応用が広がる可能性がある。研究チームは、より複雑な回路や遠隔地のIoT機器にも同じ構造を適用できるとみている。
もっとも、この技術が直ちに汎用プロセッサを置き換えるわけではない。まずは低消費電力の超小型回路や、電池交換が難しい遠隔環境向けIoTシステムなどで先行活用される可能性が高いとしている。
AIやIoT機器の普及が進む中、消費電力を抑えながら長期間自律動作できる半導体への需要は一段と高まっている。今回の研究が、次世代の自律駆動型集積回路に向けた基盤技術となるかが焦点となりそうだ。